安倍晋三首相の訪米に関して、訪米前よりトップニュース扱いをしていた日本のマスコミは、アメリカのマスコミも高い関心を示しているかのようなニュアンスで報道していた。だが、実際にはアメリカでの関心は低調であった。ただし例外的に「ワシントン・ポスト」が安倍首相への単独インタビューを掲載したが、その記事に対して中国政府が反発した模様が若干の関心を引いていた程度であった。
その安倍首相訪米に関して、アメリカ政府が公表した公式な声明は3つである。まず、安倍首相とオバマ大統領が主に安全保障問題に関して話し合った後に、公式記者会見ではなく記者を前にして共同で「談話」の形として発表した声明。次に、日本のTPP交渉参加に関する「日米共同声明」。それに首脳会談後の岸田文雄外相とケリー国務長官との会談前に行われた共同記者会見での声明であった。
それらのうち、オバマ大統領の声明とケリー国務長官の声明の中で、アメリカ側は日本の安全保障に関して言及した。まずは、それらの安全保障に関する公式表明を見てみよう。
共同談話中の安全保障に関するオバマ大統領の声明
「日本はアメリカにとり緊密な同盟国の1つであり、日米同盟は太平洋地域におけるアメリカによる地域安全保障と様々な活動の根幹をなしていることは明らかです。そしてその親密な関係は政府間にとどまらず国民の間にも広がるものであります。
安倍首相自身はアメリカにとって見知らぬ人ではありません。彼と私は、同じような時期にカリフォルニアで学んでいたと記憶しております。そして今回のオーバルオフィス訪問は首相にとって初めてではありません。したがって、私たちが、あらゆる分野にわたって非常に強固な職務上の関係を築くことを期待しております。
われわれは、幅広い安全保障問題に関して、とりわけ北朝鮮が取り続けている挑発的行動に対する懸念とそれに対する強固な対抗措置の決定について、緊密な協議をいたしました。
また、私たちは広範囲にわたり多国間問題に関して話し合い、アメリカのアフガニスタンでの活動やイランでの核問題解決に対する取り組みなどに対して日本が行った支援に対する私からの感謝を伝えるとともに、アルジェリアのBP施設での人命の犠牲に対してお互いに弔意を表明し、これによってより強力な対テロ対策に関する協力を促進することを約束しました」