ドイツの連邦統計局の調べでは、2011年、ドイツで生まれた子供の34%が婚外子だった。旧東独に限ると、婚外子の率は61%にもなるという。フランスでは、2007年より、婚外子の数が嫡出子の数を上回った。つまり、赤ん坊の半分以上が婚外子。これがカトリックの国の話なのが凄い。

 子供ができたあとで遅ればせながら籍を入れるカップルも多いが、この統計は、世の中の移り変わりをかなり顕著に表していると思う。一言で言うなら、子供を産むのに、結婚は別に必要なくなったのである。

ドイツでは婚外子はごく普通の存在に

一卵性四つ子が1歳の誕生日、ケーキでお祝い ドイツ

今年1月に1歳の誕生日を迎えたドイツの一卵性の四つ子〔AFPBB News

 そう言えば今のドイツでは、若い男女が夫婦のように暮らしていても、誰も自動的には、彼らが結婚しているとは考えない。

 それが学生ならまだしも、40歳近くになってもずるずるとそのまま夫婦のように暮らしているカップルも結構多い。結婚しないうちに倦怠期に入りそうだ。

 一昔前の日本では、こういうケースは住民票に続柄“妻(内縁)”と書かれ、何となく極道の妻っぽい、反社会的なイメージがあった。しかし、ドイツ社会ではすでに籍が入っていなくてもパートナーは公式に認められる存在となっている(ただし、しょっちゅう入れ替わる相手ではなく、固定の相手でなくてはならない)。

 そういう事情なので、現在のドイツでは、婚外子と言っても、別にわけありでも何でもない。ごく普通の、籍の入っていないカップルの間に生まれた子供というだけの話だ。父親が一緒に暮らしていない場合でも、たいていはパパの存在ははっきりしている。

 婚外子を特別視したり、差別視したりする風潮もあまりない。また、すでに社会福祉制度もそれに対応しており、ドイツやフランスでは、既婚でも未婚でも、生まれた子供に対して行われる補助には分け隔てがない。婚外子と言えば、母子共に小さくなって暮らさなければいけなかった時代は、完全に過去のものとなった。

 ドイツに合法的に暮らしていれば、妊娠中の検診も、病院での出産費用も、そのあとの検診も、一切お金はかからない。外国人でも、留学生でもそれは同じだ。そして、子供は少なくとも18歳までは子ども手当がもらえ、そのうえ、やはり18歳までは医療費も教育費もすべて無料だ。

 つまり、経済的な面では、子供が生まれたからといって慌てて籍を入れるメリットは全くない。子供の権利は一律に保障されている。生まれてくる子供には何の罪もないからだ。

 ただし、こういうふうに家庭という制度が壊れてくると、両親と子供を基本とした従来の枠組みがうまく機能しなくなる。そして、これまではあり得なかった様々な問題が発生する。例えば、親権の問題だ。