巨大家電メーカー「タクミ電機」が2兆円の負債を抱え、倒産まで余命3カ月という設定でドラマは始まった。NHKが放映した「メイドインジャパン」は、日本の電機・半導体産業が大崩壊した昨今から、話題としては大変タイムリーなドラマであると言える。

 3週連続放送の第1回目は「メイドインジャパンとは何か?」を問う場面もあり、極秘に作られた再建チームにもリアリテイがあって、前のめりになって見ていた。しかし2回目以降は話が混乱し、最終回は完全にとっ散らかってしまった印象を受けた。

 タクミ電機でリチウムイオン電池の開発を中断されリストラされた技術者の迫田氏が、中国の来生(ライシェ)に入社する。そしてリチウムイオン電池の開発を続行し製品化に漕ぎ着ける。ここまではよくある話だ。

 タクミ電機の再建チームは、来生のリチウムイオン電池はタクミ電機の技術を無断使用したものとして、来生に5000億円のロイヤルティを請求するが、来生はこれを拒否する。タクミ電機は、不正競争防止法に違反しているとして、来生を提訴する。ここまでもありそうな話だ。

 ところが、提訴された来生の迫田氏は、タクミ電機に反論するための記者会見で、「リチウムイオン電池の技術は、タクミ電機時代に開発し、来生で製品化したもの」であり、「技術とは世の中の人々を幸せにするために存在するもの」であると発言してしまった。

 ドラマとはいえ、ちょっとこれはあり得ない。NHKとしては「技術とは誰のものか」を問いたかったのかもしれないが、日本でリストラされて海外に渡った技術者が突如、良心に目覚めて、自分の立場を危うくするような上記発言をすることは、常識的には考えられない。

 さらに、タクミ電機の再建チームのリーダー矢作氏が、上記記者会見をきっかけに、迫田氏と“和解”していまい、来生への提訴を取り下げ、来生との技術提携を結ぶ方向に舵を切る。物語はここで終わるが、こんな“和解”はあり得ないでしょう。技術の無断借用の言質を取ったわけだから、タクミ電機は徹底的にこれを叩くのが普通でしょう。

 また来生との技術提携も不自然極まりない。この背景には、シャープと鴻海精密工業との技術提携があると思われるが、日本の電機産業に起きているすべての現象をドラマに盛り込もうとしたがために、不自然な結末になってしまったように感じる。

 結局、ドラマの出だしは大変興味深かったが、最後に話が二転、三転してしまったことがこのドラマを分かり難いものにしてしまった。テーマがタイムリーであっただけに残念だ。