ロシアでは一昨日3月4日、大統領選挙が実施されました。立候補者は計5人。3月5日現在の暫定結果では投票率約64%。ウラジーミル・プーチン候補(現首相)が約64%の得票率で、涙の勝利宣言。2位の共産党ジュガーノフ候補約17%、3位のプロホロフ氏約8%となりました。(敬称略)
蓋を開ければプーチン大勝で終わったロシア大統領選
焦点は≪プーチンが勝つかどうか≫ではなく、≪勝ち方≫の問題でした。もし当選に必要な得票率過半数すれすれか、過半数を割り決選投票にでもなれば、≪プーチン神話≫は大きく傷つきます。プーチンは大勝してこそ、プーチンなのです。
プーチン当選は事前の世論調査の予測通りですが、実は昨年12月4日のロシア下院選挙における政権与党『統一ロシア』の大敗後、プーチン支持率は一時期4割前後にまで急落。これには、プーチン首相陣営もさぞかし慌てたことと思います。
決戦投票ともなれば、3位以下の候補と合従連衡が必要になり、当選後の政権運営基盤弱体化を余儀なくされます。
前例があります。1996年6月の大統領選挙ではボリス・エリツィン候補は過半数を獲得できず、翌7月、2位のジュガーノフ共産党候補との一騎打ちとなりました。
この時、エリツィンは3位のレーベジ候補(陸軍退役中将)を取り込み、当選後、レーベジ将軍は論功行賞で安全保障会議書記の要職に就任。このため、政権内部の権力闘争が激化。
その後、金融危機を経て政権基盤は弱体化。1999年末の大統領辞任に至ります(もちろんほかの要因もありましたが)。
危機感を抱いたプーチン陣営は急遽対策を講じ、今年1月12日には選挙綱領を発表(注:標題のみ稿末【参考資料2】)。「何だ、立候補者が選挙綱領を発表するのは当然ではないか」と思うことなかれ。過去、プーチンは選挙運動をしたことはなく、選挙綱領も発表していません。
要するに、周囲がすべてお膳立てして、何もしなくても当選することを前提に立候補したのですが、今回は従来とは全く異なる様相の展開となりました。
ロシア下院選挙の結果を受け、政権内部の幹部人事を刷新。選挙綱領発表・汚職撲滅強化・各種論文発表・国民との対話推進等々、支持率回復すべく、巻き返しを図ってきました。