「国家の目標は強いロシアの実現である。国家は今、分裂の危機に瀕している。人口は減少、経済は脆弱、国家運営は非効率である」

 さて、誰の発言でしょうか?

プーチン大統領第1期政権・大統領年次教書

プーチン氏、ロシア大統領に就任 4年ぶりの復帰

宣誓するプーチン大統領〔AFPBB News

 実は、ウラジーミル・プーチン新大統領その人です。プーチン新大統領の顔は強張り、初の大統領年次教書冒頭の一句は悲愴感に溢れていました。ときは2000年7月8日、ところはクレムリン。

 プーチンは歯に衣着せず、ロシアの現状を批判。これは同時に、ボリス・エリツィン前大統領への批判でもありました。

 プーチン新大統領初の年次教書は、ロシアの絶望的な現状を背景に悲痛な内容となりました。欧米マスコミは≪強いロシア≫の部分を強調、プーチンは独裁政権を目指していると批判。

 しかし筆者は、「国家は分裂の危機に瀕している」という率直な現状認識と心情の吐露に、≪プーチンは本気で国家再建を目指している≫と理解しました。

 2年目の年次教書では、国家の統一性維持には成功したが、「ロシアには官僚主義が跳梁跋扈、企業に圧力をかけている」と現状を鋭く批判。3年目は官僚主義批判と汚職撲滅に重点が置かれ、第1期政権最後となる第4回教書では、軍改革、貧困対策と国内総生産(GDP)倍増計画が発表されました。

プーチン大統領第2期政権

 上記の大統領年次教書に比べ、第2期政権最初となる2004年の第5回年次教書の力点は住宅・医療・教育に置かれました。大変地味なテーマであり、≪今年の大統領年次教書はつまらなかった≫との感想も数多く聞かれました。

 しかし筆者は、全く逆の感想を持ったのです。国家崩壊・資本流出・官僚主義・汚職撲滅などという世間受けする内容から、住宅・医療・教育という地味な社会福祉の分野に重点が移ってきたこと自体、ロシア社会がそれだけ成熟してきた証拠と受け止めました。

 人は≪衣食足りて礼節を知る≫。ロシア社会も、70年余の共産党独裁政権の時代と国家崩壊を経て、やっとこの水準にまで達したということではないでしょうか。

 プーチン第2期政権最後の演説となる2007年4月26日の第8回年次教書では、過去を総括。「ロシアは世界経済のトップテンの仲間入りをした。2000年より国民実質所得は倍増した」と、プーチン政権8年間の成果を誇示しました。