ロシアではドミトリー・メドベージェフ新内閣が5月21日、ウラジーミル・プーチン新大統領に承認され誕生。翌22日には、ロシア大統領府幹部人事が発表されました。5月21日まで政府の大臣職であった要人の多くが、翌日には大統領府に移動した次第です。

ロシア大統領府とは?

プーチン露大統領、ウクライナで首脳会談に4時間遅刻

ウクライナ南部クリミア半島のヤルタで、握手を交わすプーチン大統領(左)とビクトル・ヤヌコビッチ大統領(2012年7月12日撮影)〔AFPBB News

 メドベージェフ首相率いる新内閣においては、同首相側近にて民主化の旗手、アルガジー・ドヴォルコビッチ氏がイーゴリ・セーチン前副首相の後任としてエネルギー管掌副首相に就任。国営企業民営化推進担当となりました。

 果たして新内閣の思惑通りに民営化は進むのでしょうか?

 まず、新大統領府と新内閣の力関係ですが、旧ソ連邦時代の用語を使用すれば、新大統領府はソ連邦共産党中央委員会書記局、新内閣は旧ソ連邦政府となりましょうか。

 ソ連邦共産党書記局は政策立案・決定機関、政府は執行機関。真の権力機関はソ連邦共産党書記局でした(付言すれば、ソ連邦にはロシア共産党は存在しませんでした)。

 実際問題として、露大統領府は旧ソ連邦共産党書記局のあった、クレムリン近くの旧ソ連邦共産党本部ビルに居を構えています。大統領府に入ったことのある筆者友人の話では、ロシアで一番入館の厳しい建物の由。

 プーチン陣営の実力者ほぼ全員が大統領府に移ったことにより、文字通り、旧ソ連邦共産党書記局復活の様相と相成りました。

プーチン新大統領のエネルギー政策・キーパーソンは?

 プーチン大統領最側近のセーチン氏はプーチン第1期政権時代(2000~2004年)、当時露最大手の石油会社“ユーコス”のミハイル・ホドルコフスキー社長追い落としに辣腕を振るい、ロシアでは中堅石油会社にすぎなかった“ロスネフチ”にユーコス社資産を買収させ、同社は露最大の石油会社に変貌。

 プーチン首相時代(2008~2012年)には、エネルギー管掌の副首相を務め、ロスネフチ会長も兼任。ただし、同氏はメドベージェフ氏(現首相)とは犬猿の仲で、両者が大統領府勤務時代、廊下ですれ違っても挨拶さえしなかったそうです。

 そのセーチン氏がメドベージェフ新首相の下で働くはずもなく、予想通り、閣外に出ました。内閣に留任せず、大統領府にも移動せず、22日にはメドベージェフ新首相からロスネフチ社長候補指名を受け、翌23日のロスネフチ臨時取締役会にて社長に選出されました。

 これらの事実をもって、露でも日本でも一部マスコミにて「セーチン冷飯説」が流れました。日本のN紙見出しは「大統領側近、国営石油トップ復帰」、A紙は「プーチン氏の側近、なぜか冷や飯」。筆者は直ちに、「セーチン冷飯説」を否定しました。

 プーチン大統領は5月22日、大統領令#695に署名。民営化推進を謳いましたが、民営化担当業務は国営持株会社“ロスネフチガス”と指名。そのロスネフチガスの取締役候補にセーチン氏が指名されており、取締役選出後、同社会長に就任する見込みです。

 すなわち、セーチン会長のロスネフチガスが他の国営エネルギー関連企業民営化の際、株式を取得して、同社がロシアの天然資源を支配する一大コンツェルンになる可能性大です。手始めに、露送電網会社と配電網会社を統合。ロスネフチガス傘下に収め、その統合会社の社長には盟友シュマトコ前エネルギー相が就任するとも噂されています。