前回は男性の身体的特徴のうち、「精子の生産とその処理」という点から恋愛を分析してきました。今回は年齢と性欲の関係について見ていきたいと思います。
年齢と性欲の関係
男性にしても女性にしても、性欲は年齢に左右されます。男性が最も性欲を持つのは一般的に20歳前後、女性のピークは30代と言われていますが、真偽のほどはどうでしょうか?
年齢と性欲との関係を調べた学者がいます。テキサス大学のデビッド・シュミット教授らですが、2002年のカナダの雑誌にその研究が発表されています。年齢が様々な1000人近い人たちにアンケートしたところ、図表5-1のような結果となりました*1。
縦軸は性欲を7点満点で数値化させたもの、横軸は18歳から64歳までの年齢層です。この図表から2つのことが分かります。
第1に、男性の性欲は年齢層にかかわらず常に女性の性欲より強いということです。点線(男性)が実線(女性)を下回ることはどの年齢層でもありませんので、男性はいつの時点でも性欲を女性よりも多く持っていることになります。この差異は、男性のみが持つ性処理の欲求に由来すると言えるかもしれません。
第2に、男性のピークは18歳から徐々に上がり、25~29歳でピークに達しますが、女性の場合は30~34歳でピークに達します。なぜ男性が20代後半で女性が30代前半なのでしょうか。
性欲のピークは子づくりと密接な関係がありそう
男女のピークが入れ替わっても(男性のピークが30代前半、女性のピークが20代後半)、全く差し支えないように思えるのですが、実際にはこのように違いがあるということは、生物学的に何らかの理由があるはずです。
一般的に言われているのは、女性の性行為におけるオーガズムが開発されるのに時間がかかるので、30代前半に性交の快楽に目覚めるというものです。この通説はもっともらしいですが、理論的な欠点は、ではなぜピークが30代後半や40代前半に来ないのかという点です。30代前半である必然性がこの通説だけでは足りません。
もう1つ考えられる仮説は、男性の性欲のピークが20代後半であるので、その時期に結婚する意志がピークに達する、そして女性が子供を産む時期は30代前半にピークに達するようになっているというものです。
つまり、女性の妊娠しやすい年齢と性欲が一致しているというものです。確かに、10代での妊娠率より20代、20代より30代の方が1回の性交での妊娠可能率は上昇していると言われていますので、この仮説には信憑性があります。
*1=David P. Schmitt et al. “Is There an Early-30s Peak in Female Sexual Desire? Cross-sectional Evidence from the United States and Canada.” The Canadian Journal of Human Sexuality. 2002, 11, 1-18.