2011年10月26日に投開票された韓国・ソウル市長補欠選挙で、野党系無所属候補の朴元淳氏(パク・ウォンスン=55、当選翌日に市長に就任)が、与党ハンナラ党候補の羅卿瑗(ナ・ギョンウォン=47)氏に圧勝した。
大統領選を1年後に控えた「首都決戦」の決め手となったのは、「経済両極化」への不満だった。大企業や財閥を強く批判してきた市民運動家出身の朴氏の当選に、経済界には緊張が走っている。
20~40代の7割が与党候補にNO!
今回のソウル市長選挙は、まさに野党系候補の圧勝だった。朴氏の得票率は53.4%で与党の羅候補に7ポイント以上の大差をつけた。
特に大差がついたのが、若者層の得票率だった。地上波放送3社の共同出口調査によると、20代の69.3%、30代の75.8%、40代の66.8%が朴氏に投票して、与党の羅候補を圧倒した。
20代から40代の若者層の7割が与党候補にNOを突きつけたことは、与党にとっては衝撃的な結果となった。
「また、よりによって大変な人が当選したものだ」。投開票から一夜明けた10月27日昼に会ったある財閥企業の役員は、こうため息をついた。
「大変な人」とはまさにそうだろう。当選した朴市長は、韓国の財閥にとっては最も「恐ろしい人物」だからだ。朴市長は検事出身だが、すぐにやめて弁護士となり、市民運動にかかわった。
2000年の総選挙の際に、特定政治家を狙い撃ちにした「落選運動」を繰り広げたことは日本でも広く知られているが、韓国の経済界でそれ以上に有名なのは、「参与連帯」という市民運動団体だ。
韓国経済界が怯えた「参与連帯」
朴氏が設立にかかわったこの市民団体は、財閥の世襲人事や不透明な企業統治を強く批判した。対象企業の株式を取得して株主総会に乗り込み、徹底的に経営陣を追及した。1998年のサムスン電子の株主総会は、この参与連帯のメンバーの追及で13時間半という記録的なマラソン総会になった。
朴氏は、その後、「美しい財団」という社会貢献団体を設立したが、この団体にはサムスン、現代自動車、ポスコなど韓国を代表する財閥や大企業がこぞって寄付に応じている。大企業に「朴氏ににらまれてはかなわない」という思惑がなかったとは言えないだろう。