日本の東日本大震災の「反射利益」を得ているのは、韓国の自動車や電子・電機メーカーばかりでない。韓国に中国などから大量の観光客が詰めかけ、期待以上の特需を得ている。東北アジアの観光大国の座を競う日韓両国だが、今年は、韓国への海外からの来訪者数が初めて1000万人を超える可能性も出てきた。

 両手にデパートの大きなショッピングバッグを5つも6つも持って談笑しながら歩く女性3人連れ。ソウルの中心部でこういう女性グループと言えば、数年前まで決まって日本人だった。だが、よく見ると「ユニクロ」のショッピングバッグも。すれ違いざまに聞こえてきたのは日本語ではなく、中国語だった。

満室だらけでホテルの予約が取れない!

夏休みで賑わう韓国の観光地

観光客誘致に力を入れる韓国。震災後、中国からの観光客が急増している〔AFPBB News

 ソウルではいま、すさまじい勢いで中国人旅行者が増えている。

 「おかげさまで12月中旬まで100%満室です。キャンセル待ちもたくさんいただいており、申し訳ありませんが、これ以上の予約は受け付けておりません」

 2011年10月10日。日本から知人が韓国を訪問するというので、ソウルの江南地区にある比較的混雑していない中級ホテルを予約しようとしたが、ネット予約がうまくつながらない。面倒なので直接フロントに行ってみたら、丁寧ながら断固とした答えが返ってきた。

 このホテル、つい2年前までネット予約すれば1泊10万ウォン(1円=15ウォン)以下で宿泊できた。いまは「格安12万ウォン」となっているが、部屋そのものがまったくない。ここだけではない。いま、ソウルのあちこちのホテルでまったく予約ができない状態が起きている。

 ソウルでホテルに30年以上勤務する知人に聞いてみたら「私も、こんなことは初めて。昨年末くらいからおかしいと感じていたが、今年春以降、まったく異常な状態が続いている」と語る。

長年不動の1位だった日本人観光客、3年内に逆転は確実か

 「ホテル予約非常事態」の主役は、何と言っても中国人だ。韓国観光公社がまとめた1~8月の統計によると、中国人来訪者数は前年同期比14%増の144万人となった。ウォン安や韓流ブームなどの追い風もあって、日本人来訪者数も前年比3%増の199万7000人となったが、伸び率では中国人にまったくかなわない。

 韓国の観光業界関係者によると、「3年後には中国人の来訪者数がこれまで長年不動の1位だった日本人を抜く」と見る。一部には、「もっと早い時期に追い抜くだろう」との声も出てきた。