JBpressからコラムを書いてほしいという依頼が来た。「大規模なIT投資をしたものの経営力強化につながらず、業績が低空飛行、という話をよく聞く。経営の視点からITをとらえ直し、経営力を強化する手法を紹介してもらえないか」というものである。
システムの重要性を理解していない経営者
何を、どのように経営者に伝えるべきか。経営者に何を伝えればいいのか。正直なところ悩んでいた。そもそもコラムを引き受けて大丈夫なのか。
そんな折に、当社のクライアントの1社からいきなり書面が届いた。「2009年12月末をもって、コールセンター業務、データセンター業務、顧客管理システムの移設(打ち切り)をするので、契約解除したい」という通知である。
しばらくすると、その会社の総務部長が来て、「業績が思わしくない。経費節約の一環として貴社より安いコールセンターと、運用費用の安いソフトウエア会社が見つかったので、そこにサーバーを移設し、顧客管理システムを運用させようと考えている」と言うのである。
システムを丸ごと移し替えようというのだから、大変なことである。システム運用とは、そんな簡単なものではない。
様々なソフトウエアで構成され、データベース(DB)や、ネットワークなどが複雑に絡み、高度なセキュリティーで守られ、何より高度な技術者が運用・監視しているのである。恐らく、くだんの経営者は、家の「引っ越し」程度に考えているのであろう。
移設後に稼働できないリスク(ほぼ100%稼働しないだろう)が高いので、私はその会社の社長に直接メールをして、「想定されるリスクに関して説明したい」と伝えた。だが、何の返信もない。移設後、間違いなく3カ月はシステムが停止する危険性があるにもかかわらずである。
そこで、私はコラムの依頼を受けることにした。
少しでも、経営者に、自社のシステムに関する知識を深めてほしい。そして、システムを駆使して経営をより効率的に行い、会社の生産性(利益)を高めてほしいと思ったからである。
同時に、設備投資を有効に使い、システム運営による損失をなくしてほしいとも思ったからである。このコラムでは、なるべくITの専門用語を使わずに、分かりやすくお伝えしたいと思う。