欧州を恐怖に陥れた食中毒騒動、
夏の海外旅行は大丈夫か?

2011.08.05(Fri)白田 茜

 女性の患者が多いことについて、東京家政大学家政学部栄養学科の森田幸雄准教授は、サイエンスメディアセンターのホームページで、O104:H4に汚染していたスプラウト(かいわれ大根、もやしなどの新芽野菜)への嗜好性との関係を指摘している。スプラウトは一時期、感染源として疑われ、実際、汚染もしていた。

 「原因食品と疑われているスプラウトを女性や20歳以上の人が好んで食べるという“摂取のバイアス”がかかっているからかもしれない」。汚染された食品を、女性や若い世代が好んで摂取する傾向があったということだ。

 O104:H4には、「志賀(シガ)毒素」という強力な菌が含まれていた。志賀毒素は、志賀赤痢菌が作るタンパク質毒素のこと。「志賀」は1898年に赤痢の患者から最近の培養に成功した志賀潔の名前に由来する。

 志賀毒素が体内に侵入すると、大腸をただれさせ、血管壁を破壊して出血を起こす。腎臓や他の臓器を侵し、脳や神経に障害を与える溶血性尿毒症症候群(HUS:Hemolytic-Uremic Syndrome)になり、発病してから短期間で生命が奪われることもある。

 O104:H4の持つ強い毒性について、アデレード大学の感染症研究センター所長、ジェームズ・パトン教授が同ホームページでコメントしている。

 「通常、志賀毒素を産生する大腸菌が原因で、HUSになるケースは患者の中の5%未満ですが、今回はHUSに至った患者たちの割合は非常に高く、患者全体の約25%でした。そのため、O104:H4 は感染力の強い菌と言えます」

2つの大腸菌が組み合わさった変異体だった

 世界保健機関(WHO)は6月2日、O104:H4はこれまでヒトの疾病原因として検出されたことのない致死性のものであることを明らかにした。暫定的な遺伝子解読の結果では、O104の菌株は2つの異なった大腸菌の突然変異体であることが分かったという。

 その後の調査でO104:H4の性質が明らかにされてきた。国立医薬品食品衛生研究所のホームページによると、O104大腸菌株は、「腸管凝集性大腸菌」(EaggEC:Enteroaggregative E.coli)の病原性に「志賀毒素」が組み合わされたものであるという。

この連載記事のバックナンバー
トップページへ戻る