欧州を恐怖に陥れた食中毒騒動、
夏の海外旅行は大丈夫か?

2011.08.05(Fri)白田 茜

 EAggECは、1987年に発見された最も新しい種類の病原性大腸菌だ。開発途上国の乳幼児下痢症患者から検出されることが多い。日本でも、東南アジアから帰国した下痢患者だけでなく、乳幼児下痢症、集団食中毒の事例もある。症状としては、一般に粘液を含む水様性の下痢便が出る。また、腹痛を起こすことが多く、嘔吐、発熱することもある。

 O104:H4が特異なのは、志賀毒素を産生する能力があることだ。通常、腸管凝集性大腸菌は志賀毒素を産生しない。

 では、なぜO104:H4が志賀毒素を産生する能力を得たのか。パトン教授は、こうコメントしている。「この能力を得たのは、おそらく、EAggECにバクテリオファージ(細菌に感染する小さなウイルス)が感染することで、志賀毒素の遺伝子が運ばれたからだと思われます」

 つまり、ウイルスを介してEAggECに志賀毒素を生産する菌が運ばれたということだ。

 O104:H4の毒素が腸から吸収されやすくなっていると指摘する専門家もいる。O104:H4については不明な点が多いが、現在様々な研究調査が行われている。新たな事実が発見される日も近いかもしれない。

感染源はエジプト産植物の種子

 7月25日現在、O104:H4の感染源は「エジプト産植物の種子」が濃厚とされている。欧州連合(EU)は、O104の感染源が「エジプト産植物の種子だった可能性が高い」との見解を示し、EU域内市場からエジプト産のマメ科の種子を回収。10月末までの輸入禁止を発表した。

 感染源とされる種子は、マメ科の一年草「フェヌグリーク」。コロハとも呼ばれ、発芽野菜のほか、香辛料としても利用される。2009年以降にエジプトからEUに輸入された種子が疑われているが、エジプト側は感染源との指摘を否定している。種子の販路は欧州10カ国以上に広がっているという。

 これまで、感染源を特定するための調査は迷走し、市民の不安を増長させてきた。最初に疑われたのはスペイン産キュウリだ。ドイツのハンブルク保健当局は、5月26日、「スペイン産キュウリから病原菌が検出された」と発表。しかし、同月31日に「感染源はキュウリでなかった」と訂正した。

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