(英エコノミスト誌 2024年11月23日号)
ファストファッションの巨人にとって、国籍が厄介な問題になった。
SHEIN(シーイン)はどの国の企業なのか。
シンガポールに本社を構えるアパレルの巨大オンライン通販会社は数カ月以内にロンドンで株式を上場すると見られている。
同社のドナルド・タン会長は今年、会社の価値観と最も利益を上げているのが米国市場だという事実から、シーインは米国企業だと公言した。
一方で、従業員のほとんどは同社が2012年に設立された中国にいる。
このように見ていくと、シーインは1つの国に属しているわけではない多国籍企業だと言えるかもしれない。
残念ながら、中国と西側世界にまたがって活動する企業にとって、話はそれほど簡単ではない。
世界を席巻、巨大ファストファッション企業
シーインは、裕福な国々に旋風を巻き起こした革新的な中国企業の新世代に属する企業だ。
今では米国のファストファッション売上高の半分を占めており、今年は安価なブラウス、スカートなどの衣料品やアクセサリーを世界全体で約500億ドル販売し、昨年の約320億ドルから大幅増収を達成する見通しだ(図参照)。
これは西側の2大ファストファッション・ブランドであるH&M(ヘネス・アンド・マウリッツ)とZARA(ザラ)の売上額の合計にほぼ匹敵する数字だ。
中国企業と言えば、電子商取引を手がける拼多多(ピンドゥオドゥオ)の海外向け事業Temu(テム)も同様な成功を収めている。
中国テクノロジー企業である字節跳動(バイトダンス)傘下の動画共有アプリ「TikTok(ティックトック)」は、米国で約1億7000万人に利用されている。
そのほかにも、ゲームから電気自動車(EV)に至るまで、様々な分野の中国企業が西側市場で事業を拡大している。