普通の人に向かって簡単な話ができないリベラル
ウォーカー:米国は80年かけてリベラル国際秩序(法の支配、民主主義、自由貿易、国際機関を通じた協調を基盤とする国際秩序)を作った国ですが、現在は、上院も下院も共和党が支配しています。
リベラルの人たちは普通の人に向かって簡単な話をすることが下手で、エリートに向かって話すような話し方をします。一方の右派系はとても分かりやすい言葉で力強く主張したり、意見したりすることが得意です。「これはいい」「これはダメ」とはっきりと白黒つけて物を言う。
そして、今の世界の状況を見てください。中国、北朝鮮、ロシア、イランなど、権威主義の指導者を持つ国々が猛威を振るう状況になっています。このような状況になると、安倍元首相や高市首相のように白黒を明確にしてものを言う指導者が支持を得る。
──「米経済そして消費者がこれだけグローバリゼーションを通じて利益を享受していても、それを説明できる人が今はいない」「ケネディ大統領やオバマ大統領のように、米国のビジョンを国内外に明確に提示できるスポークスマンがいない」と書かれています。グローバリゼーションは破綻しているのでしょうか?
ウォーカー:これまでのグローバリゼーションはかなり機能不全に陥っています。一般の米国人はこう感じています。80年間ずっと世界の警察官の役割を担ってきたのに、イラン問題、ロシア・ウクライナ戦争、台湾有事の可能性など、世界はちっとも良くならない。いつまでも関わりあって何の得があるのか、と。
加えて、シェール革命以来、米国はエネルギーの問題から解放されました。安全保障の面で、日本には中国やロシアのような近隣の悩ましい大国がありますが、米国は軍事力で恐れるべき国に囲まれていません。だから内向きでいられるのです。
グローバリゼーションは必要なものですし、その価値をもっと説明しなければなりません。でも、今はそれができる人がいないのです。
たとえば、イランの戦争が長期化して、私たちの子どもたちが戦地に行かなければならなくなったら、あるいは、タイムズスクエアでテロが起きたら、米国はグローバリゼーションの感覚を取り戻すと思います。
つまり、内向きで終わるのではなく、ちゃんと外とのつながりを意識しないとうまくいかないのだと理解する。壁を立てて、内側にこもっているわけにはいかないのだと説明することが必要です。