イランの「小型潜水艇」が狙う米軍の急所、空母を支える補給艦を襲う脅威

 強力な米空母艦隊(空母打撃群:空母1隻、水上戦闘艦8~10隻、攻撃型原潜数隻)の継戦能力(戦闘を継続する能力)を支えるのは、アメリカが誇る重厚な兵站(後方支援。ロジスティクス)能力だ。

 航空・艦艇用燃料や弾薬、食料などを大量輸送する高速戦闘支援艦や給油を担う補給艦など多種多様な後方支援艦艇を米海軍は多数抱える。

米空母が長期間戦闘継続できるのは、重厚な補給艦部隊のおかげ。補給艦から洋上給油を受ける原子力空母「エイブラハム・リンカーン」(写真:米国防総省サイトより)

 米空母が作戦を継続する場合、平均して数日に1度、高頻度で艦上機を出撃させる場合は2日に1度の割合で、航空燃料や戦闘機・攻撃機が積載するミサイル・爆弾を洋上補給する。

 ところが、この洋上の補給線に脅威を与える厄介な存在として米海軍が警戒するのが、イラン海軍の潜水艦だろう。

 前出の『ミリタリー・バランス』によると、かなり大型のロシア製「キロ」級3隻(水中排水量3950トン。対艦ミサイル、魚雷、機雷を搭載し、2隻は稼働していない模様)と、「ファテー」級小型潜水艦1隻(同約600トン。魚雷)、北朝鮮製「ヨノ」級潜水艇16隻(同130トン。魚雷)の存在だ。

 もちろんこの程度の潜水艦戦力は米海軍の敵ではないが、それでも「周辺海域に潜水艦がいる」というだけで空母艦隊にとってはうっとうしく精神的ストレスになり、探知や攻撃にも余計な労力を費やさなければならない。

「キロ」級は、通常動力型潜水艦の中ではヘビー級だが、逆に巨体のため米海軍は比較的簡単に探知・撃破できるだろう。

 3月1日、トランプ氏は自身のSNSで「イラン海軍の艦船9隻を破壊・沈没させた。そのうち数隻は比較的大きく重要なフネで、残りも追跡している。彼らも間もなく海の藻くずになるだろう」と投稿し、戦果を誇っている。もしかしたら「比較的大きく重要なフネ」というのは、「キロ」級を指しているのかもしれない。

 だが、実は潜水艇の方が超小型で、潜航時の静粛性も優れるため、米海軍も探知・追跡にかなり手こずるのではないだろうか。しかも潜水艇は、防備が厳重な空母艦隊ではなく、これらを後方支援する補給艦を狙うのではないかとの指摘もある。

 イラン側の自爆ドローンや対艦ミサイルの攻撃を警戒し、おそらく米空母艦隊はイラン本土から500km以上離れた洋上に展開していると考えられる。そして空母艦隊の展開海域に、多数の補給艦が物資を満載にしてピストン輸送し、作戦の継続を支えているのだが、輸送艦の多くは速力が遅く、しかも航行ルートは大体決まっている。

 航行ルートの情報については、例えばイランの友好国・中国がインド洋に情報収集船を多数出動させて、米空母艦隊の動きを逐一監視しているはずで、ここから情報を得れば、大体の航路は把握可能だろう。

 あとは航路に接近し、わざと足跡を残して米側に発見させるだけでも、イラン側にとっては戦果だろう。米側が警戒を強めたり、補給艦の針路を変えたりすれば、それだけ米空母艦隊の補給に支障をきたす。

 さらには補給艦の航路に浮遊機雷を投じたり、自爆型水上ドローン(USV)を発進させたりする可能性もある。万が一米補給艦がイランの潜水艇の攻撃で大破したりすれば、アメリカ側のメンツは丸つぶれだ。

洋上でアーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦に物資補給を行うサプライ級高速戦闘支援艦(写真:米国防総省サイトより)