冷戦直後とは大違い、数値で見る“痩せ細った巨人”米軍の深刻な変貌ぶり

 世界最強の米軍に全幅の信頼を寄せ、イラン攻撃を強行したトランプ氏だが、冷戦終結時と比べて余裕のないほど痩せ細った“巨人”となっている現実もある。

 英シンクタンクIISSが発表した最新の『ミリタリー・バランス2026年版』(2025年末現在のデータ)を参考に、冷戦終結直前の同書(1990年版:1989年末時点のデータ)と比較すると、35年の間の変貌ぶりは一目瞭然である。

 今回の作戦で米軍戦力の主軸となっている海空軍力を見ると、まず米海軍は現在空母11隻を擁する。全て満載排水量10万トン級の超大型原子力空母で、艦上機70~90機を載せる史上最大級の軍艦である。だが、1989年には現在より4隻も多い15隻の空母(うち原子力空母6隻)を持っていた。

「ジョージ・ブッシュ」を主軸にした空母打撃群。かつて米海軍は空母15隻体制を維持したが、現在は11隻に減っている(写真:米国防総省サイトより)

 潜水艦もすべて原子力推進で現在計64隻を保有する。核弾道ミサイル搭載の弾道ミサイル原潜(SSBN)14隻を除き、通常の戦闘に参加する攻撃型原潜は50隻ある。一方、1989年当時もすべて原潜で計125隻保有。SSBN34隻を除く「攻撃型」は91隻で、現在よりも約1.8倍多かった。

 水上戦闘艦(巡洋艦、駆逐艦、フリゲート)も同様で、現在110隻だが、1989年は206隻を数えた。

 戦闘可能な航空機(戦闘機、攻撃機、爆撃機)も大幅圧縮され、現在3軍(海・空軍、海兵隊)合計で約3370機あるが、1989年当時は3軍合わせて約6000機を数え、現在の1.8倍の陣容を誇った。

F-16戦闘機。ステルス性はないが、卓越した運動性や爆弾搭載量の多さなど使い勝手が抜群で、今でも米空軍の主役(写真:米国防総省サイトより)
爆弾搭載量を誇るF-15Eストライク・イーグル戦闘機。2026年3月2日、クウェート軍の対空ミサイルの誤射て3機が撃墜されている(写真:米国防総省サイトより)

 冷戦終結でソ連という強敵が消滅し、「平和の配当」とばかりに、欧米は競って大軍縮を図り、アメリカもその例外ではなかった。

 もちろん、兵器の性能も年を追って高度になり、これまで3ユニットが必要な任務も、1セットで十分という事例も珍しくなく、主要兵器に大ナタが振るわれた。

 だが、「ムダ」と断じて、余力・余裕を極限まで削った結果、予期せぬトラブルが発生した時の代行役がなかったり、ローテーションに支障が出たりという課題も出ている。

 例えば、極めて高性能な軍艦1隻が、多少劣る軍艦5隻を凌ぐ性能を持つとしても、警戒のために別の5つの海域に、同時に出動することができないのである。予期せぬトラブルや損失に柔軟に対応することは、軍事の「いろは」で、これにはある程度の「数」が不可欠だ。