今、相撲界で最も問われているのは、八角理事長体制のガバナンス能力である。理事長は現在63歳。あと1回の任期を終えれば定年というタイミングで、波風を立てたくないという心理が働くのかもしれない。
日本相撲協会の八角信芳理事長(写真:共同通信社)
とはいえ、この局面で「我慢すれば逃げ切れる」というような消極的な事なかれ主義を貫くならば、相撲界の浄化は永遠に訪れない。
当事者への厳罰だけで済む問題ではない
今の相撲人気は、かつての暗黒時代を乗り越えようと奮闘する力士たちの必死の汗によって、支えられている。だが、その土俵の充実を内側から食いつぶしているのが、他ならぬ「暴力」という名の古い体質であることに、協会幹部は一刻も早く気づかなければならない。
必要なのは、部屋の枠組みや伝統という名の古い殻を破る「劇薬」である。暴力の温床となっている密室性を排除し、外部の独立した監査機関を常駐させること。あるいは親方たちの資質を定期的に第三者が評価し、不適格者を即座に排除するような既存の既得権益を根底から覆す「大刷新」だ。
膿をすべて出し切る覚悟がなければ、また同じ悲劇が繰り返されるのは火を見るより明らかだ。当事者への厳罰だけで幕を引く時代は終わった。協会という巨大な組織そのものが、自ら「大刷新」の土俵に上がり、襟を正す覚悟があるのか。それとも、このまま時代錯誤の暴力とともに沈んでいくのか。
その決断に相撲協会の明日、そして「国技」としての尊厳がかかっている。今回もまた「トカゲの尻尾切り」で終わらせ、せっかく盛り上がってきた相撲人気に水を差すようなことがあれば、それはファンへの決定的な裏切りとなるだろう。


