6倍に盛られた偽りの費用対効果
もう1つ、公聴会で聞き置かれたのが、費用対効果(B/C)だ。熊本市内から参加した寺嶋悠さんは、次のように述べた。
「国土交通省は、(略)事業継続した場合にこれからかかるコストだけを考えれば良い(略)と説明しています。(略)当然ながら、再評価を行う度に、費用対効果はどんどん釣り上がります。2022年度、残事業の費用対効果は甘く見積もって『1.9』でした。3年後の今年(2025年)7月は、『2.4』に跳ね上がりました」
以下2つの表を見比べて欲しい。両表とも、2025年に、国土交通省九州地方整備局の事業評価監視委員会に提出された川辺川ダムに関する事業再評価に出てくるB/C分析の結果だ。
1つ目の表は、評価時から完成予定(2035年度)までの残事業費を分母に計算したB/Cで、2つ目は事業開始の1967年度から完成までの総費用を分母に計算したB/Cだ。寺嶋さんが指摘したように、2022年度の「1.9」と比べると、2025年は分母の残事業費が減った分だけ「2.4」とB/Cが大きくなった。
2つ目の表を見よう。1967年度から完成までの総費用を分母にすると、B/Cは「0.4」だ。しかも、59年前からの費用を現在価値化すると、総費用は1兆1312億円。便益は4278億円。これが、かんがい用水と発電という便益を失った川辺川ダム事業の本来の姿だ。
1兆円超のダムに、2.4兆円超の効果がありますと6倍も盛って、0.4兆円の効果しかない川辺川ダムを推進しているのが、国土交通省のやり方だ。
残事業費が減れば減るほど、自然とB/Cが上がる計算方法のおかしさは、2025年12月4日に行われた超党派の国会議員の連盟「公共事業チェックとグリーンインフラを進める会」が開催したヒアリング(以下ヒアリング)で、石木ダムについても指摘された。
この計算方法は、国土交通省の「公共事業評価の費用分析に関する技術指針」(2023年9月)で定められていることが判明している(「必要性失った公共事業がなくならないカラクリ、石木ダムと善福寺川上流調節池で見えた公共事業再評価制度の構造問題」[2026.1.6]で既報)。これは、まるで、効果が低くなった公共事業を中止にさせないための指針である。

