笑顔で銀メダルを掲げる坂本花織選手(左)と銅メダルを掲げる中井亜美選手(写真:スポーツ報知/アフロ)
(田中 充:尚美学園大学スポーツマネジメント学部准教授)
ミラノ・コルティナ五輪のフィギュアスケート女子は、日本勢の坂本花織選手(シスメックス)が2大会連続表彰台となる銀メダル、初出場の17歳・中井亜美選手(TOKIOインカラミ)が銅メダルをそれぞれ獲得した。
金メダルに輝いたのは、2025年の世界女王で米国のアリサ・リュウ選手。ショートプログラム(SP)3位からの逆転だった。
「4回転ジャンプやトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)などの大技」か「芸術性も加味した完成度」か——。
激しい論争も起きた女子の4年間だったが、今回の五輪は、スケーターが磨き上げたプログラムをいかにミスなく、高い質で演じるかという重要性が改めて認識された舞台にもなった。
演技の完成度の高さを重視したメダリストたち
「メダルが一つ上がっているのに悔しいと思えるのは成長。その成長をほめたい」
今季限りでの引退を表明し、最後の五輪に臨んだ坂本選手は、前回の北京五輪より一つ順位を上げた銀メダルへの思いをこう語った。その瞳は、悔し涙でにじんでいた。
金メダルを獲得した20歳のリュウ選手とは1.89点差。明暗を分けたのは、基礎点が1.1倍になる演技後半の一つのジャンプだ。
坂本選手のフリースケーティングの演技(写真:picture alliance/アフロ)
坂本選手は、予定していた3回転フリップ—3回転トウループのコンビネーションが、最初のジャンプの着氷が乱れて単発になった。後ろのトウループの基礎点である4.62点を失い、さらに前半に跳んだ同じ単発の3回転フリップを繰り返したことで、基礎点も70%に引き下げられた。
演技最後の3回転ループに3回転トウループをつけて挽回する選択肢もあったが、本来の構成で終えた。対するリュウ選手は大きなミスがなかった。
坂本選手、リュウ選手ともに4回転やトリプルアクセルを持たない完成度を重視したプログラムでの勝負。五輪の頂上決戦ともなれば、一つのミスを取り戻すことは難しかった。
いかにミスなく、完成度の高いプログラムを演じるか——。
現在のフィギュア女子の潮流を反映した結果ともいえる。