ロシアと欧州が軍事衝突するリスクが高まる
ロシアとウクライナ、仲介役の米国の3カ国が開いた和平協議が18日に終了したが、合意に向けた進展がほとんどなかったからだ。
筆者はロシアの安全保障関係者の苛立ちに注目している。
ロシア紙アルグメンテイ・イ・ファクテイは17日「パトリシェフ大統領補佐官は『欧州諸国によるロシア船舶の拿捕を防ぐため、海軍を投入して報復することも辞さない対応をとる』と強硬な姿勢を示した」と報じた。
前述したとおり、自国の原油生産は米欧の制裁に苦しめられているため、ロシアとしては事態打開のためには強硬手段も辞さずということなのだろう。だが、欧州との間の軍事的衝突が生ずるリスクが急速に高まることは間違いない。
西側諸国は21世紀に入り、武力行使を伴わない経済制裁を安全保障上の手段として多用するようになっているが、経済制裁には「相手に深刻な打撃を与えてしまうと本来の意図に反して武力衝突を誘発する」という落とし穴がある。
その典型例とみなされているのが、石油禁輸などの厳しい措置を科された戦前の日本が「窮鼠猫を噛む」とばかりに米国との開戦に踏み切ったケースだ。
イランやロシアの地政学リスクが現実化することにより、原油価格が再び高騰する事態とならないことを祈るばかりだ。
藤 和彦(ふじ・かずひこ)経済産業研究所コンサルティング・フェロー
1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。