新卒一括採用をやめれば学生は勉強するのか?
常見:新卒一括採用が学業を阻害するという批判も見られますが、私には疑問です。2016年卒など就活を繰り下げたことが何度かありましたが、勉強に集中する時間はほぼ増えなかったことが確認されています。
日本の雇用システムは「メンバーシップ型雇用」です。学業と職業が無関係な場合も少なくありません。これが問題とされますが、大学で文学や哲学を勉強しても、その道で生きていけるとは限りません。
それに対して、新卒一括採用は広く未経験の若者を受け入れるので、さまざまなタイプの人が就職しやすくなる。新卒一括採用を批判する人たちは、こうした現実に気づいていないと思います。
また、「新卒一括採用が多様性を損なう」という批判がありますが、そんなことはありません。やり方や時期が画一的に見えますが、一芸採用など個性や才能を重視する採用手法もあり、企業の側もさまざまな工夫を凝らしています。採用する企業側は、必ずしも理想通りに採用できるわけではないからこそ多様な人材を獲得するのです。
能力が高く、経済的に恵まれていることが少なくない超エリートの方々が新卒一括採用を否定して、画一的ではないもっと自由な就職や採用の形を求める気持ちは理解できます。でも、それを一般化するのは現実的ではありません。
『僕たちはガンダムのジムである』という本を私はかつて書きましたが、世の中はガンダム、シャア専用ザクではなく、99%のジム、量産型ザクで動いているということを忘れてはなりません。
──「就活の三つの危機」として、就職氷河期、リーマンショック、新型コロナウイルスのパンデミックを紹介されています。また、それぞれの出来事への世間の理解と実情にはギャップがあるとも書かれています。それぞれ就活においてどんな影響を及ぼしたのでしょうか。
常見:「就職氷河期」という言葉自体は1992年に就職ジャーナルで初めて使われた言葉で、1994年に新語・流行語大賞の部門賞を採りました。この就職氷河期について、東京大学社会科学研究所教授の近藤絢子氏は、著書『就職氷河期世代』で就職氷河期を前期と後期に分けています。
当時は私も当事者であり、企業側でリクルーター的に学生と接していましたので、この感覚はよく分かります。データで見ても内定率や求人倍率などが悪化するのは後期です。2000年代前半が最も厳しい状況でした。