就職氷河期と比べてマシだったリーマンショック
常見:前期と後期の違いに、就活のネット化という変化があります。前期だと新卒採用・就職情報プラットフォーム「リクナビ」が登場はしていますが、まだ多くの学生が活用するわけではありませんでした。また、大学における就職支援が明確に強くなったのは2000年以降です。
このような前提に立って就職氷河期に関する言説を振り返ると、複数の誤解が見られます。この間、就活生たちはずっと放置されていたという言説がありますが、就職氷河期の後期においてこれは噓で、政府も新卒の未就労者への支援に取り組んでいました。実際に、その後支援はかなり手厚くなっています。
ただ、この時期は企業の中でも人材に対する考え方が変わり、採用基準が次第に厳格化しました。求める人物像が少しずつ変化してきたという面もあります。
この時期に就活で苦労した人たちが40代や50代になって、今でも就職できずにいるという報道を時々目にします。全くそういう方がいないとは言いませんが、大多数はその後、就職しています。あの世代がいまだに皆フリーターでいるかのような伝え方は正確ではないし、かなり問題があると思います。
さらに「新卒一括採用があるから就職氷河期が生まれた」といった言説を見聞きすることがありますが、これに関しては大いに疑問です。
市場が雇用を絞る動きを見せても、新卒一括採用があったから就職氷河期の底の時でも30万人以上の若者が就職できたと考えるほうが自然ではないでしょうか。それなのに、なぜか新卒一括採用が悪の権化であるかのように捉えられたのです。
──「就職氷河期」に関する世間の見方はだいぶ現実と乖離しているのですね。
常見:次に、リーマンショックの影響を見てみましょう。リーマンショックは2008年の秋、2009年卒の代に発生しました。
日本の就活に大きな影響が出たのは2010年卒からで、確かに2010年卒から数年間は求人倍率も内定率も厳しい期間が数年続きました。でも、実際は2009年卒で就職に苦労した層は、秋までに内定していなかった人たちです。
ここが大きく誤解されているのですが、実は2009年卒は途中まで超絶と言えるほどの売り手市場でした。この時の求人倍率が2.14倍で、「バブル期並み」と言われていました。途中までは完全な売り手市場で、東京ドームで派手に開催された合同説明会や、高級ホテルでの派手な内定者接待もありました。
本格的に就活が厳しくなったのは2010年卒からです。それでも、就職氷河期と比べれば状況はマシで、就職氷河期は求人倍率が1.1倍や1.0倍という年が結構ありましたが、2010年は1.2倍から1.3倍でした。
また、この頃の特徴として就職氷河期の前期にはなかった大学による就活支援がしっかり実行されました。
当時は民主党政権でしたが、大学に対してキャリア教育支援の国の予算がつきました。各大学年間1000万円程度でしたが、申請した大学にはほぼすべてこの予算が下りています。大学側はこの予算を使って、キャリアカウンセラーを増員するなどしました。
企業側も就職氷河期に採用を減らしたことで、組織内の人口構成が歪になるなどの問題が発生していました。ですから、採用をそこまで減らそうとは考えなかったのです。