「誰かにとって大切な人だけが死者になる」

──それはつまり、日常の中で誰もがポジショントークをしているだけ、ということですか?

南:そもそも、ポジションがわかっていないのではないでしょうか。いかなる状況と条件でそのポジションが形成されているかを、まともに自覚できていないから混乱しています。問題はそこにあるのです。相手に何か問題があると人は思いますが、実際にあるのは状況だけです。その状況を知ることが先です。

 自分の置かれている状況を冷静に見ることは非常に難しいことです。なぜなら、感情があるからです。だから、第三者に話さないと分からない。1人で考えて分かるようなことならば、僕のところには相談に来ません。

 死者も同じです。誰でも死者になるわけではありません。誰かにとって大切な人だけが死者になる。いつまでもリアルに存在し続ける。その存在といかに縁を結んでいくかで、遺された者の生き方も決まるでしょう。

南 直哉(みなみ・じきさい)
禅僧
恐山菩提寺院代・霊泉寺住職
1958年長野県生まれ。1984年、出家得度。曹洞宗大本山・永平寺での修行生活を経て、2005年より恐山へ。2018年、『超越と実存』で小林秀雄賞受賞。著書多数。

長野光(ながの・ひかる)
ビデオジャーナリスト
高校卒業後に渡米、米ラトガーズ大学卒業(専攻は美術)。芸術家のアシスタント、テレビ番組制作会社、日経BPニューヨーク支局記者、市場調査会社などを経て独立。JBpressの動画シリーズ「Straight Talk」リポーター。YouTubeチャンネル「著者が語る」を運営し、本の著者にインタビューしている。