尖閣時と現在の違いが生じている背景
筆者の出張中、中国現地で話題になったのは、尖閣の時と今回との比較で、中国国内の日本企業や日本人に対する反応がこれほど大きく異なった原因は何かという点だった。
これについては以下の3点が指摘されている。
第1に、今回中国側が問題視したのは存立危機事態が発生した場合の日本の対応に関する高市発言だったが、一般の中国人にとって存立危機事態とはいったい何を意味するのかよく分からないため、どこに怒りの矛先を向ければいいのかが分かりにくかった点である。
尖閣問題の時は、中国の領土が奪われたと中国人は理解した。福島の処理水の時は中国近海が汚染されたと受け止めた。
しかし、今回はそうした目に見えるものがないため、怒りのぶつけ方が難しかったと指摘されている。
第2に、中国人の日本に対する理解が深まったため、中国政府が「日本は軍国主義化している」「日本は治安が悪い」と中国国民向けに宣伝しても、あまり効果がなかったという指摘である。
尖閣問題が生じた2012年当時、中国人の1年間の訪日客数は143万人だった。その後人数が急増し、2019年には959万に達した。コロナの影響で減少したが、昨年は910万人まで回復した。しかも、日本は海外旅行先として最も人気が高い。
こうした日本旅行ブームで毎年多くの中国人が日本を訪問しているため、日本のことをよく理解する中国人が増えている。
彼らは日本が軍国主義でもないほか、治安も悪くないことを自らの体験として理解している。その情報がSNS等を通じて中国内で広く共有されている。
このため、政府が日本に関するネガティブな情報を流しても効果がない状況が続いている。
第3に、SNS等を通じた情報発信が中国中に行き渡っているため、中国政府がメディア報道を通じて情報をコントロールしようとしても、一般の中国人、特に若い世代の中国人には伝わりにくくなっている点がある。
今年1月以降も東京では若い世代の中国人をたくさん見かける。
彼らは楽しそうに東京タワーや丸の内、六本木のイルミネーション等を背景にスマートフォンで写真や動画を撮って楽しんでいるが、おそらくその多くは中国国内の友人向けに送られているはずである。
そうした若い世代は、SNSを通じて日本をよく理解し、中国国内では日系の飲食店や民生品を愛好している。