「法案再可決」「議員除名」…自民単独でハードルをクリア
3分の2ルールの代表的なものが、参院で否決された法案の再可決です。
法律の制定や改正には、原則として衆参両院の可決が必要です。しかし、衆院で可決された法案が参院で否決される事態は起こり得ますし、それが繰り返されれば、審議は停滞してしまいます。そこで憲法は、次の規定を設けました。
【憲法第五十九条二項】
衆議院で可決し、参議院でこれと異なった議決をした法律案は、衆議院で出席議員の三分の二以上の多数で再び可決したときは、法律となる。
現在、参院で与党は過半数を持っていません。そのため、衆院で可決された法案が参院で否決される可能性があります。しかし、自民党が衆院で3分の2以上を確保したことで、参院で否決されても衆院で再可決して法律を成立させることが可能となりました。
この結果、「参院での審議が形骸化するのではないか」という懸念も出ています。政府・与党は丁寧な議論を重ねるとしていますが、「再可決」という手段を行使できる環境が整ったことは事実です。
3分の2以上で可能になるもう一つの行為が、「議員の除名」です。除名は議員資格を剥奪する、極めて重い処分です。有権者の投票によって選ばれた議員を排除する以上、慎重な判断が求められます。そのため憲法は、3分の2以上という高い要件を設けています。
【憲法第五十八条二項】
議員を除名するには、出席議員の三分の二以上の多数による議決を必要とする。
この規定に基づき、実際に除名された例は過去3件あります。
最初は1950年。参院の小川友三氏(親米博愛勤労党)が、本会議で反対討論を行いながら採決では賛成票を投じたことが背信行為とされ、賛成118、反対10で除名されました。
2例目は1951年。衆院で代表質問に立った川上貫一氏(共産党)は戦後の講和条約の在り方をめぐり、当時の吉田茂内閣を厳しく批判します。そして「日本の独立、平和は、全面講和の締結と占領軍の即時かつ完全な撤退によって実現される」と主張しました。
しかし、時はGHQ(連合国軍総司令部)の占領下。米国を強く批判したことで川上氏は、共産革命を称賛し議会政治を否定したとの趣旨で謝罪を迫られます。これに対し、川上氏は本会議での謝罪を拒否したため、賛成239、反対71で除名されました。
3例目は2023年のガーシー参院議員(本名・東谷義和、「政治家女子48党」=旧NHK党)です。海外滞在を続け、国会に一度も出席しなかったことから、参院は「議場での陳謝」を求めましたが、これも拒否。本会議で記名投票が行われ、各党の賛成により3分の2以上が確保され、除名が決まりました。