野外の近縁な種間にみられる住み分けと食い分け

 マメゾウムシの実験の結果は、野外でもその種の住む場所や食べるエサが繁殖干渉によって影響される可能性を示している。

 野外では近縁種どうしがエサを分けている例はいくらでもある。ナミアゲハの幼虫はミカンなどの柑橘類を食べる一方、キアゲハの幼虫はパセリなどのセリ科を食べる。モンシロチョウ(図4)はキャベツなどの栽培されているアブラナ科植物をよく食べる一方、スジグロシロチョウの幼虫はイヌガラシやタネツケバナなどの野生のアブラナ科雑草をよく食べる。

図4:ソバの花を訪れたモンシロチョウ(2025年9月、長野県、著者撮影)

 こうした食草の違いは、それぞれの種が食べられる植物を開拓してきた進化の結果(あるいは植物との共進化の結果)だと言われてきた。

 けれども繁殖干渉の視点から眺めるとこの概念は大きく変わる。つまり、繁殖干渉を避けた結果として食草が決まり、その後に(しかたなく食べているうちに)その食草への適応(進化)が進むというストーリーである。

 そして最近、スジグロシロチョウとエゾスジグロシロチョウの繁殖干渉を実証した論文が出版された(Ohsaki et al. 2020, Ohata 2025)。前述したモンシロチョウとの繁殖干渉の研究についても期待している。

 ちなみに、哺乳類ではエサを分けている例よりも住み場所を分けている例が多い。例えば、北海道に持ち込まれたホンドテンと、在来のエゾクロテンは道央を境に分布が明確に分かれている。またモグラの場合、西のコウベモグラと東のアズマモグラが中部地方あたりを境界線として分布を押し合っているような状態になっている。

 東南アジアに目を向けると、アカゲザルやテナガザルが近縁な種同士で、川や山を境にして明確に住み分けている。重要なのは、おそらくこれらの種の分布も繁殖干渉が決定的な影響を与えていると考えられることだ。