「日本にAIデータセンターを作ることは理にかなっている」
──AIを支えるデータセンターを日本や中東に置くことが世界で議論されていると書かれています。また、データセンターを日本に敷設するためには、大規模な原発の稼働が必要になってくるという印象も受けました。
鈴木:地理的に見ると、太平洋を挟んで日本とアメリカは隣国の関係です。AIの本拠地はアメリカです。両国のデータセンターのつながりができることによって、アメリカのデータセンターのバックアップを提供できます。また、日本は電力の潜在能力があると言われています。これはつまり、原発の再稼働への期待があるという意味です。
日本側のAI開発においてもデータセンターの敷設には大きなメリットがあります。AIをどんな言語の人が多く使っているかと考えた時に、英語や中国語などと比べると、日本語でAIを使う人の数はまだ少ない。その結果、AIが日本語に対応する能力はまだかなり低いレベルにとどまっています。

AIの正答率は英語だと90%を超えますが、フランス語だと88%だと言われています。これに対して、日本語や韓国語の正答率はわずか70%ほどです。こうした問題に対応していくためにも、自分たちの足元にデータセンターがあることが有利になります。単純な距離とスピードの問題で、レイテンシーが低い(データ通信や処理の遅延時間が短い)とAIの計算速度が上がるのです。
ただ、AIのデータセンターは保守が大変で、そこに人員を割く必要がありますが、中東のような砂漠のど真ん中にデータセンターを作ったときに、特殊な技能を持った高給取りの専門家が何もないところに住めるかという現実があります。
そういう専門家が住みたいと思えるところにデータセンターがなければならないと考えると、日本のように魅力的な国にデータセンターを作ることは理にかなっています。
鈴木 一人(すずき・かずと)
東京大学公共政策大学院教授
地経学研究所長
1970年、長野県生まれ。95年、立命館大学大学院国際関係研究科修士課程修了、2000年、英サセックス大学ヨーロッパ研究所現代ヨーロッパ研究専攻博士課程修了。北海道大学公共政策大学院教授、米プリンストン大学国際地域研究所客員研究員、国連安保理イラン制裁専門家パネル委員などを経て20年から東京大学公共政策大学院教授、22年から地経学研究所長。12年『宇宙開発と国際政治』で第34回サントリー学芸賞受賞。
長野光(ながの・ひかる)
ビデオジャーナリスト
高校卒業後に渡米、米ラトガーズ大学卒業(専攻は美術)。芸術家のアシスタント、テレビ番組制作会社、日経BPニューヨーク支局記者、市場調査会社などを経て独立。JBpressの動画シリーズ「Straight Talk」リポーター。YouTubeチャンネル「著者が語る」を運営し、本の著者にインタビューしている。