海底ケーブルを巡る覇権争い
──そうなれば、各国が輸入を制限する動きも強まります。
鈴木:そうです。消費者は安い中国製品を求めるでしょうが、国としては先を見据えて関税や輸入規制など世界貿易機関(WTO)のルールでは認められない手段を執ってでも、制限をかけざるを得ません。
事実、アメリカは関税の壁を作って対抗しています。ただ、結果として、中国からアメリカに向かうはずだった製品の行き先が変わり、輸出先がヨーロッパや日本、そしてグローバルサウスの国々になっています。
そうなると、各国の企業が大量に押し寄せる安い中国製品と戦うことになり、疲弊します。その結果、それぞれの国々がアメリカと同じように関税や輸入規制を中国製品に対してかけなければならなくなる。アメリカが関税政策を推し進めたことで、連鎖的に同じことをする国が世界中に増えているのです。
──ITネットワークを支えるインフラの1つである海底ケーブルの所有権を巡って、国際間の覇権争いがあると書かれています。
鈴木:これまでは、アメリカ、フランス、日本という3カ国が世界中の海底ケーブルを生産してきました。海底ケーブルは光ファイバーの束ですが、AIもインターネットもデジタルなものはこうしたインフラがなければ動きません。
ロシアがバルト海で海底ケーブルを切断した、中国が台湾の海底ケーブルを切断した、ということが時々報じられます。インフラが破壊されると、金融や交通が止まりネットの接続も悪くなるので、海底ケーブルの修復能力を持つことはとても重要です。
海底ケーブルは盗聴も問題になっています。ケーブルが陸に上がってくるところに陸揚げ局がありますが、そこに変換機があります。ここでデータを電気に変えます。この変換機の部分から盗聴されることが多く、いかに予防するかという課題もあります。
アメリカ、フランス、日本が海底ケーブルの生産で国際的なシェアを占めていると言いましたが、ここに中国企業が参入しようとしています。アメリカやフランス、日本を経由しないケーブルを中国が作ろうとしているのです。
アメリカを経由したらアメリカから盗聴される可能性があるという懸念を中国は持っています。同時に、日本など他国の海底ケーブルも中国を経由させたいと考えているのかもしれません。
ケーブルを作ること自体は技術的に難しくありませんが、それを誰が敷設するのか。誰が陸揚げ局から変換する装置を操作するのか。こうしたことが重要な争点になっています。