高市首相に聞いてもらいたい落語がある!

■落語『鼠穴』のあらすじ

 鼠穴は、田舎を捨てて尾羽打ち枯らして(落ちぶれてみすぼらしい姿で)やってきた弟が、江戸で大店を構える兄を頼って上京するところから始まります。

 弟は路銀(ろぎん:旅費のこと)も尽き、わらじを履き潰し、飢えと寒さに震えながら兄の店にたどり着き、「兄貴、ここで働かせてくれ」と頭を下げます。兄貴は「そんなつまらないこというな。だったら自分で商いをやれ。その元手を貸すから」といい紙にくるんだ金を渡します。

 大金が入っていると思った弟が、表に出て開けてみるとなんとたった三文。弟は激怒し、「この三文で必ず身を立ててみせる」と誓いを立てます。

 それから十年経った寒い冬の夜。弟は懸命に働き、ついに一端(いっぱし)の商人となっています。立派な身なりで兄の店を訪れようとしながらも、蔵にできていた「鼠穴」を埋めておくようにと番頭に伝えて出ていきます。

 兄の家に来て、借りていた三文を渡して帰ろうとするのですが、兄は、「なんで十年前三文しか渡さなかったか、そのわけわかるか?」と弟に問い詰めます。

「あの時のお前にはいくら貸してやってもダメだった。荒(すさ)んでいたのがわかった。カネが入れば酒を飲むつもりだっただろう。だからあえて三文にした。悔しくなってその三文を一文でも増やしてきたら相談に乗るつもりだったがお前は来なかった」といい、その後弟が地獄のような日々を頑張り抜いていたことを兄はこっそり見ていたと打ち明けます。

「よくやった。本当に頑張ったな」と激励する兄に弟はすっかり打ち解け、二人して酒を飲み、弟は泊まることになります。

 さあ、その晩、弟宅のほうで火事が発生、弟がおっとり刀で帰ると一面火の海。番頭に問いただすと、「鼠穴を埋めておかなかった」ことが判明し、弟宅は一文なしになります。

 弟は幼い娘を連れて兄貴のところへ金を工面に行きますが、先日とは打って変わって冷たい素振り、カネを貸すどころか、「二度と面を見せるな」と張り倒します。

 行く当てもなく帰ろうとするとその帰路、娘が「私を吉原に売ったら」というとんでもない提案をするのですが、背に腹をかけられない弟はその足で娘を吉原に売り、大金を手にして吉原を後にします。が、なんとそれを狙っていたかのような泥棒に遭遇し、大金は奪われてしまいます。

 思いつめた弟は松の木の枝で首をくくる……というところで、兄貴に起こされます。

 そう、すべて夢だったのです。

「夢でよかったな。火事の夢は逆夢、ますます儲かってお前の店は猫の手も借りたくなるぞ」

「猫の手、それでオラ、鼠穴が気になっていた」

 大団円で終わるのですが、談志はこの噺(はなし)を、鬼気迫る独特の切れ味で演じたものです。爆笑問題の太田さんも、「(談志の落語の中で)特に『鼠穴』が好き」とも言っていましたっけ。

 いまでは若手も頻繁にかける大ネタの一つです。

 私はここで、「兄が弟に借用書を書かせる」演出を施していますのでぜひいろんな落語家さんの演出を味わってみてください。

 さぁ、ここでご注目いただきたいのが、談志が、観客の心に突き刺すように強調したあの小さな穴、鼠穴です。まあ、「夢オチ」で安心させる設定ではありますが、これこそが、高市政権にとっての、「普段は気にも留めないが、ひとたび火がつくとすべてを焼き尽くすことになる綻(ほころ)び」のメタファーとして捉えていただければと、願うのです。そう、衆院選で圧勝した今こそ、「油断大敵」なのです。

 さらに重ねて考えてみましょう。