未成年の性別移行を進める世の中の風潮

──トランスジェンダーを自認する方に、性別移行(トランジション)を勧める世の中の風潮に対してデブラ氏は批判的であるという印象をこの本から受けました。

森田:デブラ氏は、成人に関しては本人の意向を尊重して好きにすればいいと言っています。ただ、未成年に関しては話は別だと言っています。性別違和(自分の性別が自分の性自認と一致しないという感覚)があると主張する未成年の8割が、成人を超えると性別違和の感覚がなくなるという研究結果があります。

──十代の頃、自分はトランスジェンダーだと思っていたけれども、その後、その感覚は間違っていたと考え直して、トランスジェンダーであるという主張を撤回する人たちがそれだけいるということですね。

森田:そうです。しかし、十代でホルモン治療をすれば健康を害するリスクは高いし、ましてや外科手術などをすると取り返しのつかないことになります。

 欧米では、特に未成年が性別違和を訴え、周囲の大人や医療従事者がトランスジェンダーなのだと判断してホルモン投与や性転換の手術をしてしまい、後から後悔して当事者が性転換を勧めた医療従事者を相手に訴訟を起こすケースが頻発しています。

「社会的伝染」と呼ばれますが、欧米では十代の若者がトランスジェンダーになることが一種のブームになっています。そうした、ある種の風潮の中で性別違和の感覚を強めやすくなるのです。

 アメリカのジャーナリストのアビゲイル・シュライアー氏が書いた『トランスジェンダーになりたい少女たち SNS・学校・医療が煽る流行の悲劇』という本は、まさにこの問題を取り上げてとても注目されました。

 子どもが性別違和を感じる要因はさまざまで複雑です。女の子の場合、性被害を受けた経験が関係することがあります。「自分が女だから性被害を受けた」「男になればそういう思いはしなくていい」という認識から性別違和が始まるのです。

 また、この本にも書いてありますが、発達障害の一種である「自閉スペクトラム症(ASD)」を持つ人もトランスジェンダーになりやすい傾向があるという研究結果があります。この障害を持つ人の特徴の1つに、「空気が読めない」や「自分の立場にふさわしい振る舞いができない」という特性があります。

 性自認においてもこの特性が見られ、自分の性別にふさわしいとされる振る舞い方ができないのです。そこで「トランスジェンダーなのではないか」という可能性を提示されると、そうなのかもしれないと思いやすい。

 ですから、他のメンタル上の問題を持っていないか、かつて性被害に遭っていないかなど、専門医と慎重に確認していくことが必要です。