「オートガイネフィリア」はある種の性的嗜好
──インターセックスの人は、自分がトランスジェンダーであるという性自認を持ちやすいのではないでしょうか。
森田:そうです。外性器が未発達な場合、出生時に女性だと判断され、女の子として育てられるため、第二次性徴が始まって身体が男性化すると戸惑います。そのときに科学的に男性だと判断されても、トランスジェンダーという概念があれば自分がそこにあてはまると考えるほうがしっくりきますよね。ただ、ほとんどのトランスジェンダーの人はインターセックスではありません。
──トランスジェンダーには「アンドロフィリア・タイプ」と「オートガイネフィリア・タイプ」があるという説明がこの本の中にありました。また、トランス活動家にとって、オートガイネフィリアに関する情報は都合が悪いとも書かれていました。
森田:アメリカに、レイ・ブランチャードという著名な性科学者がいます。この方は「トランス女性」(生まれは男性だが女性だという性自認を持つ人)を数多く診察した結果、2つの異なるタイプのトランス女性がいることに気がつきました。
「アンドロフィリア・タイプ」は、男性を性愛対象とするトランス女性です。本来の性別からすると同性愛者です。
「オートガイネフィリア・タイプ」は、日本語では「自己女性化愛好症」と呼ばれますが、女性を性愛対象とする「トランス女性」です。本来の性別からすると単なる異性愛者です。こちらのタイプは性別移行手術を受けたり、女装をしたり、女性的な振る舞い方をしたりして、女性に同化しながら女性といることに性的な興奮を覚えるタイプです。
「アンドロフィリア・タイプ」と「オートガイネフィリア・タイプ」は「トランス女性」に限った話で、「トランス男性」にはあてはまりません。
オートガイネフィリアの場合は女性の心を持っているというより、ある種の性的嗜好ということになります。性的な興奮を引き出すためにやっているとなれば世間の同情は引きにくいですよね。人権運動や権利運動に結び付かなくなるのです。
──ただ「女装」することや「男装」するということは、トランスジェンダーとは別なのですね?
森田:実は、そこは微妙なところです。もともとそうした人たちは「トランスヴェスタイト」や「クロスドレッサー」と呼ばれていました。異性装を楽しむ人たちです。しかし、トランスジェンダーの定義の領域がだんだん広がり、そうした人たちも含めて認識されるようになってきました。
もっといえば、そもそも「トランスセクシャル」と呼ばれるカテゴリーがありました。これは生まれ持った自分の身体の性別に違和感を持つ人たちです。
「トランスジェンダー」という言葉は意味が広く、そうした異なる複数の周辺タイプを取り込んだ包括的な概念です。