SNSアルゴリズムがもたらした構造的リスク
SNSアルゴリズムがもたらす問題は、拡散力の偏りだけではない。偽・誤情報の増幅こそが、民主主義にとってより深刻な構造的リスクと言える。
LINEヤフーが2月2日〜5日に実施した意識調査(20〜60代の男女1052人回答)の結果は、その深刻さを数字で突きつけている。選挙期間中に偽・誤情報を見聞きしたと答えた人は40%。投票先の検討に当たり、偽・誤情報に影響を受けているのではないかと不安に感じる人も40%に上った。政治・選挙関連の偽・誤情報に関する啓発や情報提供が不十分だと感じる人は77%に達している。
偽・誤情報だと判断した理由として最も多かったのは「別の情報源を調べて判断した」の39%。複数ソースによるクロスチェックが最大の自衛手段である現状は、裏を返せば、それ以外の手段がほとんど機能していないことを意味する。また、偽・誤情報の目的について「集団による意図的な情報操作」と考える人が35%で最多だった。
今回の選挙で実際に拡散した偽・誤情報の事例を具体的に見てみよう。
中道改革連合の斉藤鉄夫共同代表が「人間より他にもっと大事なものがある」と発言したとする動画がXで拡散された。しかし実際には、斉藤氏はTBSテレビの番組で上記の発言に続けて「そういう考え方には立たない。人間を中心に考えていくことが中道主義の本質だ」と述べていた。文脈を切り取った「切り抜き」が、発言の趣旨とは真逆の印象を拡散させたのである。
このファクトチェックは佐賀新聞社、時事通信社、日本テレビ放送網、読売新聞社の有志4社が共同で行ったものだ。
他にも、「比例は高市早苗と書きましょう」という投稿がXで16万回以上表示されたが、衆院選の比例代表は政党名のみが有効であり、個人名を書けば無効票になる。また中道改革連合のロゴを中国国旗風に改変した画像が拡散する事例も確認されている。
SNS上の「おすすめ」は、アルゴリズムによって、ユーザーの関心に合致するセンセーショナルなコンテンツを優先的に表示するものだ。その結果、偽情報であっても「バズる」コンテンツは拡散され、正確だが地味なファクトチェック記事は表示されにくい。
このスピードと「誤りの訂正されなさ」の非対称性が、16日間という超短期決戦ではとりわけ大きく作用する。偽情報を打ち消す時間的余裕がないまま、有権者は投票日を迎えたことになる。