SNS戦をを制した「高市」

 では、そのSNS空間では何が起きていたのか。時事通信がSNS分析ツール「ブランドウォッチ」を用いて、公示日の1月27日から2月5日までの各党首によるXの投稿を分析した結果は鮮明だ

 高市早苗首相(自民党総裁)の投稿65本の平均リポスト数は約5200。2025年参院選時の石破茂首相(当時)の約200と比較して圧倒的な差がついた。最もリポストされた投稿は2月5日の「最後のお願い」で、3万5000超に上っている。

 一方、前回の参院選において、SNS上で存在感を発揮した参政党と国民民主党は苦戦した。

 同じく時事通信の分析によれば、参政党・神谷宗幣代表の平均リポスト数は約1600で、参院選時の約3100からほぼ半減。国民民主党・玉木雄一郎代表も約600から約300に減少した。選挙ドットコムの鈴木邦和編集長は、YouTube上のデータ分析からも「高市一強」状態を指摘し、参政党・国民民主党が「再生数で完全にやられている」と分析している

 中道改革連合の野田佳彦、斉藤鉄夫両共同代表は新党の認知度向上もあってリポスト数を大きく伸ばしたが、自民党の物量にはなお差があった。野田氏が「熱狂より冷静な議論を」と呼びかけたこと自体が、SNS空間における「熱狂」の構造を自覚したうえでの差別化戦略だったと指摘する声もある

 高市首相の最終演説地は東京・世田谷区の二子玉川だった。子育て世代が多く住む地域を意識した選択で、SNS映えする大規模街頭演説の戦略性をうかがわせる。また自民党が公示前日にYouTubeに投稿した高市首相のメッセージ動画は、わずか10日足らずで再生回数1億回を突破した。Xなどで広告として配信されていたことが影響しているとみられ、「広告費にいくら使ったのか」との疑問の声も上がっていると時事通信は報じている

 ここに横たわる問題は、「拡散されること」と「政策を伝えること」のギャップだ。ショート動画の「歯切れの良さ」は断定的・断片的な表現に陥りやすく、誤解のリスクを内包している。また高市総理のような、個人的人気を誇る候補や政党にとってより有利に働くと考えられる。拡散力と政策理解の深度は、必ずしも比例しない。