さらには、多党化も自民党を利している。自民、維新、中道、国民民主、共産、れいわ、参政、保守、社民、みらい、減税日本・ゆうこく連合と多様である。自民党以外の政党が票を奪い合えば、それは自民党を利することになる。

 与党の自民と維新は連立を組みながら、全289選挙区のうち85選挙区で競合している。競合区以外の129選挙区では、維新は自民党候補を支援するが、自公政権時代の緻密な選挙協力とは様変わりである。

 自民党が単独過半数を制すれば、衆議院(定数465)に関するかぎり、連立のパートナーとして維新は不要である。しかし、参議院(定数248)は、自民が101、維新が19で、両党では過半数に達しない。参議院の状況を考えれば、維新との連立を解消するわけにはいかないだろう。

封印された消費税減税

 高市は、食料品の消費税を2年間ゼロにするという公約を掲げた。みらい以外のほとんどの政党が、消費税の廃止や減税を掲げているので、消費税が争点から消えてしまった。争点潰しの戦略としては成功している。

 しかし、高市は、消費税減税については、国民会議で「検討を加速する」としか言っていない。「検討する」というのは、永田町用語では、「実行しない」という意味である。

 国民会議は、これから与野党で設置するものである。設置に至る期間も限定されていない。しかも、昨年11月の予算委員会では、「レジの改修に1年以上かかる」として、消費税減税に反対している。

 そもそも、消費税減税が本当に物価を押し下げる効果を持つのかについても、様々な見解がある。外食産業への悪影響も指摘されている。

 しかも、選挙戦では、消費税減税については封印し、言及していない。

 減税がもたらす悪影響の典型例は、イギリスのトラス・ショックである。

 消費税減税提案は、財政悪化の懸念を生み、長期金利の急騰を招く。イギリスでは、2022年9月にリズ・トラス首相が、大型減税を打ち出して、ポンド安、債券安、株安のトリプル安を招いて、わずか44日で政権が崩壊した。今の日本とは経済状況が異なるので、同列には論じられないが、深刻な事態を引き起こす可能性は念頭に置く必要がある。