「市場か国家か」ではない、問題は「誰のための仕組みか」
市場は成長を生み出すが格差を拡大させやすく、国家は一時的な安定をもたらすものの、長期化すれば経済の活力を損ない、歪みが蓄積しやすい。
ただし、歴史を振り返ると、問題の核心は「市場か国家か」という制度の選択そのものにあったとは言い切れない。むしろ、どの制度が採用されたとしても、そのコストや歪みが、最終的に誰の肩にのしかかったのかという点こそが、社会の不安定化を左右してきたように見える。
市場主義の行き過ぎは、格差の拡大を通じて生活者の不満を拡大させた。一方で、国家主義の長期化もまた、市場の歪みが主としてインフレを加速させ、生活コストを高めてきた。制度の違いにもかかわらず、負担が生活者に集中するという帰結は、繰り返し現れてきたのである。
現在の経済が直面している課題も、行き過ぎた政策の帰着点が極端になるリスクを伴っている。その意味で、いま問われているのは、市場か国家かを選び直すことではなく、制度が生み出す負担を、誰がどのように引き受けているのかという原点に立ち返ることだろう。
平山 賢一(ひらやま・けんいち) 麗澤大学経済学部教授/東京海上アセットマネジメント チーフストラテジスト
1966年生まれ。資産運用会社を経て、1997年東京海上火災保険(現:東京海上日動火災保険)に入社。2001年東京海上アセットマネジメントに転籍、チーフファンドマネジャー、執行役員運用本部長(最高投資責任者)を歴任。2025年からは経済史研究を軸足に現代の金融市場を分析。メディア出演のほか、レポート・著書などを多数執筆。主著に『戦前・戦時期の金融市場 1940年代化する国債・株式マーケット』(日本経済新聞出版)、『金利の歴史』(中央経済社)、『物価の歴史』(中央経済社)などがある。
