市場主義が抱える弱点を露呈した日本の第一次世界大戦期

 ただし、市場には弱点もある。

 将来への期待が過度に強まると、人々は実際の利益以上の価値を見込むようになる。その結果、株価や不動産価格が実体経済から乖離して上昇する局面が生じる。いわゆるバブルである。

 このような局面では、資産を多く保有する人ほど恩恵を受けやすくなり、格差が拡大しやすい。経済指標の上では好況に見えても、生活実感としては豊かさを感じられない人々が増えていくことになる。

 こうした市場主義の拡張が、具体的な形で現れた事例として、日本の第一次世界大戦期を挙げることができる。民間企業の活動は活発化し、交易も拡大したが、その一方で所得格差が拡大し、社会の不安定さが強まった。

 市場主義は成長をもたらす力を持つが、放置すれば社会の均衡を崩す側面も併せ持っている。やがてバブルが崩壊すると、経済の縮小とともに雇用環境は悪化し、多くの人々が成長の果実から取り残されていった。

 このような不均衡が深まる局面で、前面に現れてくるのが国家である。複雑化した不満や不安が社会に蓄積すると、国家はそれらを整理し、秩序を回復する役割を担おうとする。金融政策や財政政策を通じて市場に介入し、経済の動きを調整し始めるのである。

 市場主義の行き過ぎが第一次世界大戦期であったとすれば、その反動として国家主義的な色彩が強まったのが第二次世界大戦期の経済社会であった。