中国の急ピッチの核増強、世界はどう対峙すべきか

――中国の核兵器拡張*6は、その影響力を増大させています。中国の核兵器保有量はどの程度増大すると予想されますか。また、米国はこの増強に効果的に対応できるのでしょうか。 

フィッツパトリック 中国の核拡張は否定できない事実であり、米国の超党派の国防戦略家たちの多くが、米国自身の核戦力拡大を求める声を上げています。

 しかし私は、これはナンセンスだと考えています。それは、米国とソ連が合わせて7万発もの核弾頭(抑止に必要な量をはるかに超える量)を製造した冷戦時代の軍拡競争の誤りを繰り返すことになります。

 米国は、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)による効果的な第二撃能力を確実に維持し続けるべきです。

*6 中国の核兵器数は歴史上類を見ないスピードで急拡大。2023年以降、毎年約100発という極めて速いペースで増え続けている。米国防総省は30年まで1000発超の運用可能な核弾頭を保有すると予測。現在のペースが維持されれば35年までに1500発に達する可能性があるとの見方もある。単に数が増えるだけでなく、核の「三本柱(陸・海・空)」の多様化と高度化が進む。米国の軍事介入を阻止するための「安保環境の再編」が狙いとみられている。

――今回のNDSの形成において、米国防総省のエルブリッジ・コルビー政策担当国防次官*7が中心的な役割を果たしたと広く指摘されています。核政策に関する彼の具体的な哲学と、それが戦略的安定性に与える影響をどのように特徴づけますか。 

フィッツパトリック 申し訳ありませんが、この質問は私の専門外です。

*7 コルビー氏はイデオロギーを排した冷徹なリアリスト。戦略の根幹にあるのが「拒否」という概念で、相手が攻撃を仕掛けても「目的を達成するのは不可能だ」と物理的に分からせることで攻撃を思いとどまらせる手法だ。「攻撃したら後でひどい目に合わせるぞ」という「報復的抑止」だけでは中国のような大国には不十分だと唱え、第1列島線に沿って、中国が軍事的な既成事実を作るのを防ぐ具体的で強固な防衛網を構築することを最優先にする。彼の戦略の下では日本や韓国は単なる「守られる側」ではなく、米国の中国包囲網を維持するための「不可欠な、しかし自立を求められる軍事拠点」として再定義されることになる。

【木村正人(きむら まさと)】
在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争 「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。