日本の中からも「韓国の核武装は必要」との声があがる可能性

――現在、欧州で行われている米国の核共有協定(ニュークリア・シェアリング)*4が段階的に廃止されたり、大幅に変更されたりする具体的なリスクはありますか。 

フィッツパトリック 現在、米国が核共有協定の変更を検討しているという兆候は見られません。しかし、西半球に焦点を当てた米国の防衛体制再編の必然的な帰結として、その変更が行われる具体的なリスクは存在します。

 また、欧州との国防支出レベルに関する交渉や、あるいはグリーンランドに関する譲歩を迫るような無関係な問題における「交渉材料(バーゲニング・チップ)」としてトランプ氏が欧州の戦術核兵器を利用する可能性も十分にあります。

 とっぴな話ではありますが、彼がこれまで口にしてきた他の予測不能な言動を考えれば、もはや考えられないことではありません。

*4 核共有とは、核兵器を保有していない北大西洋条約機構(NATO)欧州加盟国が自国内に米国の核兵器(航空機投下型のB61重力爆弾)を配備し、有事の際には自国の航空機でそれを運搬・投下するという合意。ドイツ、イタリア、ベルギー、オランダ、トルコの5カ国(一部報道では英国も復帰)がこの枠組みに参加しており、米国の核約100発を配備。

――自国の核能力を求める国が増える可能性がある中で、われわれは世界の核不拡散体制が崩壊する真のリスクに直面しているのでしょうか。 

フィッツパトリック (われわれが知る限り)現在、9カ国の核保有国クラブ*5に新たに加わろうとしている非核保有国はないため、不拡散体制が崩壊するリスクがあるとは言えません。しかし、それがどのように起こり得るかというシナリオは想定できます。

 韓国が北朝鮮に対する抑止の第一責任を負うべきだというNDSの示唆は、韓国にその目的のために核兵器を求めるさらなる理由を与えます。韓国の核武装は、日本の一部の人々にも核が必要だと感じさせることになるでしょう。

 一方、トランプ氏が同様に欧州の防衛に消極的であることは、ポーランドのような国々の核オプションへの関心を煽る可能性があります。もしイランが核兵器開発を再開すれば、サウジアラビアもそれに続くでしょう。

 核不拡散体制には多くの潜在的な亀裂が存在します。しかし、幸いなことに、現在はまだ強固に保たれています。

*5 ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)のまとめによると、核保有数はロシア5459発(配備数1718発)、米国5177発(同1770発)、中国600発(同24発)、フランス290発(同280発)、英国225発(同120発)、インド180発、パキスタン170発、イスラエル90発、北朝鮮50発。(2025年1月時点)