米国の金融市場で流動性が急減する可能性
2024年第4四半期に3039億ドルだった米国の経常赤字は昨年第1四半期に4502億ドルに急拡大した後、第3四半期には2264億ドルに急減している。
トランプ関税の影響で米国の貿易赤字が減少したことが主な要因だろう。
米国の昨年10月の貿易赤字は294億ドルと約16年ぶりの低水準になっており、第4四半期の経常収支はさらに減少した可能性が高い。
経常収支の赤字と同様、資本収支の黒字も急減しているため、ダリオ氏は米国の金融市場の流動性が急速に低下することを恐れているのではないだろうか。
流動性の低下は金融市場でくすぶり続けているリスクを顕在化させる。
昨今、話題になることはほとんどなくなったが、米国の商業用不動産市場は依然として不調だ。にもかかわらず、金融市場で動揺が広がっていない。
潤沢な流動性のおかげで満期を迎えた商業用不動産(CRE)ローンは条件変更などで期限が先送りされてきたからだ。2023年に満期を迎えたCREローンの約4割が延長されたと言われている。
だが、本当の試練はこれからだ。今年満期を迎えるCREローンの総額は9360億ドル、来年は9830億ドルとピークを迎える。
流動性の低下が災いして、AIやCREなどの分野で異変が生じ、米国の金融市場全体に動揺が広がるのではないかとの不安が頭をよぎる。
好調さを維持し続ける米国の金融市場だが、残念ながら、今年は大荒れになってしまうのではないだろうか。
藤 和彦(ふじ・かずひこ)経済産業研究所コンサルティング・フェロー
1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。