会話のターンを奪われない話法

水野:彼女はインタビューで話を途中で遮られることが多く、「Why is Mrs. Thatcher interrupted so often?(なぜサッチャーは頻繁に話を遮られるのか)」という論文が1982年に発表されたほどです。

 イギリス英語では、話の終わりにイントネーションが下がる傾向がありますが、サッチャーの話し方は特定のフレーズでその降下が顕著でした。本人にその意図がなくても、聞き手には「終わった」と誤解され、質問が割り込むことになっていたようです。

──会話を遮られないためには、イントネーションへの配慮が必要ということですね。

水野:僕の知人でオンライン書店・バリューブックスの飯田光平さんも、遮られやすい話し方をします。

 彼の話し方の特徴は「直接話法」を多用すること。直接話法とは、話し手が実際に発した言葉を、そのまま引用する表現方法のことです。

 例えば「『この前、面白いことがあったんだ』って友だちが言ってた」。この話し方では「この前、面白いことがあったんだ」と言われたところで、聞き手はリアクションをしてしまう。

 これを間接話法で話すと「この前、面白いことがあったと、友だちが言ってた」となります。この話し方ならば、誤って割り込まれる可能性は低くなります。

 間接話法で話した方が、ターンを誤ってとられるリスクは少ないように感じられますが、別に直接話法が悪いと言っているわけではありません。直接話法は直接話法で、臨場感が伝わるというメリットもありますので。

──ほかに、会話のターンを奪われない工夫はありますか。

水野:フィラーを出すのが有効だと思います。「うーん」「あのー」といった意味を持たないつなぎ言葉は、話す意思を示すサインになります。特に「あれなんですよ」という語り出しは、これから話が続くことを知らせる効果があると研究でも示されています。

──これまで、多くの非ネイティブ日本語話者から「日本語は動詞が変化しないのに主語が省略される」「会話中に誰が主語なのかわからなくなることがある」とたびたび言われてきました。なぜ日本語は、主語がなくても会話が成立するのでしょうか。