ドル覇権の終焉で日本はどれほどのダメージを受けるか
河野:これはアメリカがもはや覇権国として世界の面倒を見ないということですから、ドルの単一基軸通貨制も崩れます。
大統領経済諮問委員会(CEA)委員長のスティーブン・ミランは論文で「各国はアメリカの安全保障や国際金融システムに“ただ乗り”している。相応の負担をすべきだ」と主張しています。
私たちから見れば、ドル国際金融システム・クラブにおいて“途方もない特権”を享受しているのはアメリカのほうです。それにもかかわらず「会費を引き上げる」と言われれば、代替システムがもし存在するのなら、クラブから抜けようと考える国が出てくると思います。
この本を書き終わった後、ロンドンに行ったのですが、現地の投資家は2月のヴァンスの演説の後、そして4月のトランプの関税表明の後、アメリカに集中投資していた資金を一部回収して米国外へ分散投資をしていました。
彼らからは「日本だけがそのような動きをしていないようだが、なぜか」と聞かれました。安全保障でアメリカに頼っているため、日本のエスタブリッシュメントは米国の覇権継続を疑っていない、としか返事できませんでしたが。
かつてポンドが基軸通貨の地位を失った時に宗主国イギリスの次にダメージを被ったのが、その傘の下でスターリングポンドのブロックに入っていた国でした。日本の先行きが重なって見えます。
日本でも日米同盟だけではリスクがある、という議論は出ています。従来のアメリカ依存をプランAとすれば、他ともつながっておくことを検討するプランAダッシュ、より具体的には欧州と組むプランBが考えられます。
悩ましいのは中国の問題です。中国との間に領土的問題がない欧州の人たちには、中国が戦後の多国間主義を守ろうとしているように見えるのです。
中国も成長率が鈍化していくし、米国からは叩かれていますから、したたかに考えて、しばらくは韜光養晦(とうこうようかい、鄧小平、爪を隠して時期を待つ)戦略を取るでしょう。そうすると、欧州の同盟に中国も参加するプランCになりかねません。