自民は、逆風ではないが追い風もない

 他党との保守票の争奪戦という観点も重要だ。自民は、参政、国民民主、維新と競合する小選挙区が多い。特に参政は昨年夏の参院選で躍進し、得票を大きく伸ばした。

衆院選の公約を発表する参政党の神谷代表=23日、国会(写真:共同通信社)

 自民にとって、参政、そして国民民主と日本保守党から、票を奪い返すことが、実は裏の課題なのだ。実際、自民政権公約は「新しい戦い方」への対応や継戦能力確保といった防衛体制整備、外国人に関するルール整備、国家情報局設置など、象徴的な保守政策を明記する。高市首相は1月24日、国旗損壊罪の創設にも重ねて意欲を示している。

 また、内閣支持率が高いといっても「高市首相は支持するが、自民党は支持しない」という層が相当程度存在することが指摘されている。世論調査によっては、自民支持率が24年秋の石破政権発足や衆院選の時より低かったり、同水準だったりしている。

 つまり、内閣支持率が高い割には、自民支持率はそれほど高くない傾向があるということだ。この乖離は、高市人気が自民候補の得票に直結するとは言えないことをうかがわせている。

 これらを勘案すると、公示前までの前哨戦では大まかに、自民にとって、逆風ではないが、追い風までは吹いていないと捉えることができる。

 閣僚経験者の一人は「小選挙区で公明票が離れる上、参政候補などとぶつかるため、もともとの保守層の票も奪われる。全国的に見て、こうした小選挙区は多いはずだ。どう考えても、自民党が議席を大きく増やせる状況にあるとは思えない」と慎重な見方を示す。

 高市内閣の支持率が高いと喧伝されることがマイナスになり得るとの指摘もある。自民ベテラン陣営は「有権者から、高市首相の人気が非常に高いので、今度の選挙は楽勝だろうと言われた。公明票の離反などはあまり知られていないためで、現状が正しく伝わっていない。危機感を持っている」と話す。

 また、保守層を意識した高市カラーの政権公約が、党内でもろ手を挙げて歓迎されているわけではないことも、士気の低下をもたらす可能性がある。

「円安の加速や金利上昇、止まらない物価高を直視して、処方箋を示すことが第一だ」(党四役経験者)、「党内を保守とリベラルに分断するような風潮は受け入れられない。参政党が外野から主張するなど不愉快なことが起きている」(党ベテラン)との声が出ている。

 こうした状況を踏まえれば、公示前までの戦況では、自民は190議席台の現状程度を確保した上で伸長する勢いだが、単独過半数に届くかどうかは微妙だと言える。