マッキンリーをなぞるトランプ、関税と海洋国家の夢
ドンロー主義に本腰を入れ始めたトランプ氏は、西半球に閉じこもるどころか、むしろ今以上にアジア太平洋での覇権確保に執念を燃やす可能性も少なくない。
それは尊敬する、第25代米大統領マッキンリー(任期1897年~1901年)の足跡をたどれば、トランプ氏の世界戦略をある程度想定できる。
第25代アメリカ大統領のウィリアム・マッキンリー(写真:Newscom/共同通信イメージズ)
ちなみに、アラスカにある北米大陸最高峰は、マッキンリーの大統領在任中に「マッキンリー山」と命名されたが、オバマ政権下の2015年に、先住民にちなんで「デナリ」に改称。だが、2025年にトランプ氏が2期目の米大統領に就任すると、その日のうちに「マッキンリー山」の名前を復活する大統領令に署名するほど、トランプ氏は崇拝する。
マッキンリーは1890年代の議員時代から、高関税でアメリカを繁栄させられると訴え主導した。この「マッキンリー関税」を、トランプ氏はそっくりまねている。
1898年には、圧制に苦しむ植民地のキューバを解放するとの御旗のもと、宗主国のスペインとの戦いに挑む。いわゆる米西戦争はアメリカの圧勝で、キューバはアメリカの占領下に置かれ、スペイン領だったプエルトリコ、グアム、フィリピンは米領になった。
並行して太平洋の真ん中に浮かぶ重要拠点ハワイ共和国を、1898年にかなり強引に併合している。現在アメリカが太平洋の覇権を確固たるものにしているのも、マッキンリーのおかげと言っても過言ではない。
マッキンリーは米海軍士官で戦略家のマハンに共鳴して、マハン提唱の「シーパワー(海上権力)」を支持した。海上交通路の確保と、これを担保する強大な海軍力の存在が、国家の繁栄を保障するという考え方だ。
こうした歴史を回顧するまでもなく、トランプ氏は一見「ドンロー主義」で西半球に閉じこもり、他地域での軍事プレゼンスを低下させるそぶりを見せるが、アジア太平洋だけは“例外”とする可能性が極めて高いだろう。アジア太平洋は今後も世界経済の成長センターであり続け、仮にこの地域を中国が支配した場合、アメリカの国力は確実に中国に抜かれてしまうからだ。
また中国が台湾を併合すれば、中国は太平洋への直接アクセスが可能となり、やがて中国空母艦隊が、グアムやハワイどころか、気づけばカリフォルニア沖に出現、という状況にもなりかねない。
地政学では、勢力圏を保持しようとする大国は、ほぼ例外なく「緩衝地帯」を確保して、勢力圏の安全保障をがっちりと固めようと奔走する。ドンロー主義に走るトランプ氏にとって、太平洋は緩衝地帯そのもので、アメリカの「内海」でなければならず、その外縁で中ロと対峙するのが、第1列島線を構成する日本、台湾、フィリピンとなる。
この理屈からすると、トランプ氏はアジア太平洋地域を軽視するどころか、より一層重視する可能性が高い。ただしこの場合、同盟国の日本や韓国、フィリピンなどにより一層の防衛力強化を迫ってくることを覚悟しなければならない。







