米軍機150機出撃の過剰戦力、ベネズエラは防空網制圧の実験場になったのか

 注目は、アメリカがベネズエラという中小国の弱小な防空網(それでも中南米最強を誇った)を叩くため、精鋭の軍用機を150機以上も投入したという点だ。少々大げさで、「牛刀をもって鶏を割く」そのものだ。

 英国際戦略研究所(IISS)発行の『ミリタリーバランス(2025年版)』によれば、ベネズエラ空軍の戦闘機数は、米製F-16の18機とロシア製Su-30 21機の計39機のみ。低稼働率を考えれば、実際に飛べる機体は20機程度だろう。

 ベネズエラ軍のSAMは大部分がロシア製で、長射程のS-300(射程200~250km)12基が米軍にとって多少厄介なアイテムで、ほかに射程30km前後の中射程SAMを100基ほど配置する。中国がステルス機も発見可能と豪語するJY-27早期警戒レーダー(探知距離500km)も気になる存在だ。

 だが、米軍はベネズエラの首都カラカス一帯を停電にし、通信網も遮断。首都付近に配置された同レーダーやSAM、地上駐機の戦闘機を、世界最強のSEAD/DEAD(防空網制圧/破壊)能力と電子戦能力(ジャミング:妨害電波など)でたやすく無力化した。首都周辺の制空権(航空優勢)を確保したのは、マドゥロ氏拘束に向かうヘリコプター部隊の“露払い”が必要だからである。

MH-60汎用ヘリによる奇襲攻撃訓練を行う米陸軍部隊。マドゥロ大統領の拘束では漆黒の暗闇の中、暗視システムを完備した同機を使い、マドゥロ大統領拘束作戦が行われた(写真:米陸軍ウェブサイトより)

 米国防総省の発表や欧米メディアの報道をまとめると、作戦に投入された米軍機約150機の顔ぶれは、F-22ステルス戦闘機(空軍)、F-35ステルス戦闘機(A型は空軍、B型/垂直離着陸機は海兵隊、C型/空母艦上機は海軍)、B-1爆撃機(空軍)、B-2ステルス爆撃機(同)、F/A-18戦闘攻撃機(空母艦上機。海軍、海兵隊)、EA-18Gグラウラー電子戦機(海軍)、E-2早期警戒管制機(「空飛ぶレーダー」。海軍)など多岐にわたり、陸軍の輸送・攻撃ヘリも各種参加したとされる。

ベネズエラを攻撃した2026年1月3日に撮影された、旧ルーズベルト・ローズ海軍基地に駐機する米空軍のF-35戦闘機(写真:ロイター/アフロ)
アメリカはベネズエラ攻撃に大げさとも思えるB-1爆撃機までも投入、精密誘導爆弾を投下したと思われる(写真:米空軍ウェブサイトより)
空中給油を受けるEA-18Gグラウラー電子戦機。ベネズエラ攻撃では自慢のジャミング能力で中国製レーダーを封殺(写真:米海軍ウェブサイトより)
米海軍のE-2D早期警戒管制機。「空飛ぶレーダー」で、数百km遠方の敵機をキャッチし、友軍機を的確に指揮統制する能力を持つ(写真:米海軍ウェブサイトより)

 さらに、全幅が20m超の三角形型の大型偵察ドローンで、ステルス性に富む軍事機密の塊、「RQ-170センチネル」も出撃したと言われる。

 米軍は陸・海・空・海兵隊の4軍から第一線の機体が参画し、ベネズエラ沖には最新鋭で世界最大級の原子力空母「ジェラルド・R・フォード」(満載排水量10万トン超、積載機数75機以上)や、空母型の強襲揚陸艦「ワスプ」級(同4万トン超)なども待機した。

米海軍の最新鋭原子力空母「ジェラルド・R・フォード」。飛行甲板には空爆が主任務のF/A-18戦闘攻撃機がズラリ(写真:米海軍ウェブサイトより)
ワスプ級強襲揚陸艦「イオージマ」。マドゥロ大統領夫妻を米本土に連行する際の中継地点としても活用された(写真:米海軍ウェブサイトより)