愛らしくも自分勝手なクソ野郎
物語は、前述したサフディ思い入れの靴屋「Norkin Shoes」から始まる。そこでマウザーが接客していると、レイチェル(オデッサ・アザイオン)が訪れる。マウザーは対応していた客を他の店舗スタッフに適当に任せて、レイチェルを連れ立って店舗奥の在庫棚に行ってセックスをする。そこにアルファヴィルの最高にキラキラした名曲「フォーエバー・ヤング」が流れる。
このオープニングには、マウザーの愛らしくも自分勝手、横柄で女癖が悪い感じなどがぎっしりと詰まっているが、そこに「フォーエバー・ヤング」の甘く希望に溢れるユーフォリックな賛歌が流れて、なんとなくいい感じになるところまで周到に計算されている。マウザーはクソ野郎だが、彼の見る夢はとてつもなく大きく、そして美しいのだ。
ここに続くシーンで、マウザーはニューヨークのロウワー・イーストを闊歩するのだが、ここでシャラメの歩き方もまた、よく演出されている。
シャラメといえば、出世作となった「君の名前で僕を呼んで」(2017)や「デューン:パート1」(2021)、「ボーンズ・アンド・オール」(2022)など、その華奢な体格と少年のような繊細な表情を思い浮かべる。しかし、本作でのシャラメは、そのような繊細な装いを残しつつも、華奢な上半身を大きく揺らして大股で闊歩する。
卓球の試合でも、その華奢な身体で最大限の虚勢を張るために誰よりも大きく動き、相手を凌駕していく。その姿は、本作のキャッチコピーになった「ドリーム・ビッグ」を体現するに相応しく、このシャラメに連れられるようにして、私たち観客は映画の物語の中に連れていかれるのだ。
「ローレンス」でプレーするマウザー(クレジット:A24)