大学教授には、ソーシャル・インパクトとしての成果が求められている?
平尾:確かに、正規の大学教授にいきなり就くのは民間出身者には難しいかもしれません。
一方、非正規の大学教授、例えば特任教授や講師などの仕事の間口は広いのが現実です。大学側も採用に苦しんでいますし、民間出身者が求められているのは先ほどお話しした通りです。
「非正規」では、生活が安定しないのでは?と考える人もいるかもしれません。これについては、それほど不安視する必要はないと思います。
というのは、大学の非正規雇用でも任期(3~5年など)があらかじめ決まっていて、その中で評価が高いカリキュラムをデザインしたり、ソーシャル・インパクトとして成果を残せれば、契約は更新される可能性が高いのです。その授業を引き継げる人材が、簡単に見つかるわけではありませんから。
成果次第で契約が更新される、という意味においては、普通の会社員とそれほど違いはないかなと思います。むしろコンサルタントの契約に近いと考えられますね。
──平尾さんご自身は、43歳のときに大学教授に転身されました。
平尾:以前は、IBMやGEといったグローバル企業でマーケターとして働いていました。リーマンショックのとき、誘われた有力スタートアップにボードメンバーとして入社した直後に、リーマンショックの影響を受けて「リストラ計画をつくるように」指示されました。
私が受け持っていたチームのリストラ案をつくっているうちに、「これは私をリストラすれば予算を達成するのではないか」と思いつきました。そして2つの案を社長に提案しところ、私が解雇される案が採用されたわけです。
ある意味、経営者としてとても合理的な判断だと思います。しかし、これまで民間一筋で「キャリアアップ」ばかり考えてきた私にとって、この出来事は衝撃でした。自分にとっての仕事のあり方そのものが問われるタイミングだったのです。
それ以降、フリーランスとして働きながら、起業家やNPO法人の代表など、会社員時代には縁がなかったような人たちと知り合うことになります。彼ら/彼女らと交流することで、自分が囚われていた「キャリアアップ」「(自分の能力の)市場価値絶対主義」といった価値観がいかに狭いものであったかを痛感しました。
そこで、自分の経験値をいかして社会に役に立ち、自分自身が望む未来をつくろう、と決心し、大学教授に転身したのです。
──とはいえ、民間でバリバリ活躍されてきた40代の方々が大学教授に転身するというのは、大きなキャリアチェンジです。不安も大きいのではないでしょうか。