米国の軌道を外れた先にあるものは・・・

 では、トランプ政権2期目に今現れているのがそれなのだろうか。

 確かに、ぐらついていたり、うわべだけになっていたりする民主主義国の支配者にとっては、自由や透明性という徳目について指導されることなく米国とビジネスをどんどん進める機会に満ちた世界だ。

 外交活動を思いつきで展開するトランプのテンポに最も上手に合わせている人を選ぶなら、やはりパキスタン軍トップのアシム・ムニール元帥に最優秀賞を贈らねばなるまい。

 ムニールはどの国とでも仲良くなるミドルパワーの格好の手本であり、ワシントンから北京へ、リヤドからテヘランへと飛び移っている。

 また、トランプはおだてればたいていのことは受け入れる人物だと早くに見抜いていた。そのおかげで隣国インドが大層いら立っている。

 トランプを喜ばせることをせず、ミドルパワーのゲームも期待していたほど簡単でないことが分かったからだ。

 日本の元外相で博識な河野太郎は最近、作り直されたシステムにおいて東京がグローバルサウスと米国の間を「橋渡し」する時期なのかもしれないとFTに語った。これは称賛に値する構想だ。

 何十年もの間米国を周回していた多くのミドルパワーが、誰も導いてくれない不確かな軌道に放り出されるのではないかと心配していることを考えれば、特にそうだ。

希望と失望

 だが、今のところは残念ながら、欧州以外のミドルパワーは不安定で不確かな秩序の下で有利な立場に立とうと競い合う状況になっているようだ。

 シンガポールの著名な経済学者ダニー・カーが指摘するように、「大国が我々に希望と失望の両方を与えたとするならば、ミドルパワーも同じように最初は私たちを魅了するものの、最終的にはがっかりさせることになるだろう」。

(文中敬称略)

By Alec Russell
 
© The Financial Times Limited 2025. All Rights Reserved. Please do not cut and
paste FT articles and redistribute by email or post to the web.