低体温症に陥る2026年のロシア経済

 恐らく、2026年のロシア経済は、原油価格の極端な上振れでもない限り、1%前後の低成長にとどまるのではないか。同時に、成長率との見合いでは、過去のトレンドよりも高いインフレを伴うことになると予想される。ロシア国民の生活は成長率の印象よりも悪いものになるだろう。2026年のロシア経済は“低体温”に陥ると予想する。

 他国、特にG7諸国と比べると、ロシア経済の成長率はそれほど低下しないため問題は軽いという論者もいる。しかし、そうした国際比較は、ロシア国民にとっては意味がない。なぜなら、国民が比較するのは、あくまで過去と現在だからである。軍需の景気けん引力が弱まる一方で、民需を圧迫し続けるのだから、生活は当然、苦しさを増す。

 だからといって、ロシア経済がすぐに危機的な状況になるわけではない。それに経済的には、ロシアはウクライナとの戦争をまだまだ継続できる。増税の余地はまだまだ大きい。民需向けのモノやサービスの不足が深刻化すれば、価格統制なり数量統制なりに踏み込めばいい。このように経済運営の統制を強めることで、戦争は継続できる。

 ただし、本当にそこまでアクセルを踏み込むかどうかは定かではない。大国ロシアが“小国”ウクライナとの戦争でなぜそこまで苦しむ必要があるのか、経済や社会を犠牲にすることの正当性が問われるからである。

 経済的な継戦能力は残っていても、政治的な継戦能力は着実に低下していることを、プーチン大統領自身が最も認識しているはずだ。

※寄稿は個人的見解であり、所属組織とは無関係です

【土田陽介(つちだ・ようすけ)】
三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)調査部主任研究員。欧州やその周辺の諸国の政治・経済・金融分析を専門とする。2005年一橋大経卒、06年同大学経済学研究科修了の後、(株)浜銀総合研究所を経て現在に至る。著書に『ドル化とは何か』(ちくま新書)、『基軸通貨: ドルと円のゆくえを問いなおす』(筑摩選書)がある。