都市部の住民も感じ始める戦争の悪影響
一般的に、スタグフレーションを改善させるためには供給を刺激する必要があるが、需要と異なり、財政・金融政策を通じて供給を刺激することは難しい。それに、供給を刺激できたとしても、軍需が膨張したままなら、結局は軍需向けのモノやサービスの生産が優先されてしまう。
それでは軍需を縮小できるかというと、それも難しい。ウクライナとの戦争が継続する限り、軍需は膨らんだままであり、民需は圧迫され続ける。
民需向けのモノに関しては、輸入である程度はカバーできる。ただ、輸入のためには輸出で十分な外貨を稼ぐ必要があるが、原油需要の低迷や経済制裁の強化を受けて、輸出を増やすことは容易でない。輸入を通じた供給の増加もまた難しい。
ロシアの財政だけを考えた場合、高インフレをある程度は放置した方がいいという現実もある。
以下の図表で示したように、戦争で多額の軍事費が生じているにもかかわらず、名目GDP(国内総生産)との対比で測った政府債務はそれほど拡大していない。これは、高インフレで名目GDPが急増しているためで、“インフレ課税”と呼ばれる現象である。
ロシアの国債発行残高 (注)資金循環統計ベース (出所)ロシア中銀、ロシア連邦統計局
言い換えれば、政府は国民に高インフレというかたちで、軍事費の負担を押し付けている。そして、高インフレを継続するためには、民需向けのモノやサービスの供給をある程度は圧迫し続けたほうがいい。それでも財政がひっ迫しているため、ロシアは年明けに付加価値税(VAT)を20%から22%に引き上げるという有り様だ。
こうした状況の下では、民需向けにモノやサービスの供給を増やすことなど極めて難しい。2026年、ロシア国民は開戦直後の不景気以来となる経済の不調に直面すると予想される。恐らく、これまで少なくとも戦争がもたらす経済面での悪影響が軽微だった都市部においても、それをロシア国民が実感する機会が増えてくるのではないか。