今年のベスト謝罪は?
最後に、「良かった謝罪」を見てみましょう。
牛丼最大手・すき家では、提供した味噌汁にネズミが混入していたことがSNSで出回り、春ごろには連日テレビニュースで報道されるほどの大事件になりました。
これに対しすき家を運営するゼンショーHDは、なんと全国のすき家を休業させ、衛生チェックを実施しました。2000店近い巨大チェーンの一斉休業など聞いたことがありません。
損失売上だけで24億円とも試算されましたが、プライム上場企業であるゼンショーHDの体力が、こんな荒療治を可能にしたのかも知れません。
すき家の看板(写真:共同通信社)
結果としてすき家事業は、事件を受けた休業による売上減に見舞われたものの、足元では客足も回復してきました。身を切る謝罪が功を奏した例だといえるのではないでしょうか。
それから、もうほとんどの方は忘れているでしょうが、俳優の吉沢亮さんは2024年末、酔って他人の家に侵入してしまい警察沙汰になるというやらかしがありました。住居侵入容疑で書類送検されましたが、その後に不起訴となりました。ご本人は深く反省し、ていねいな謝罪をされたと伝わっています。
吉沢さんをCMに起用していたいくつかの大手企業は契約を中途解約・終了しましたが、「ブランドアンバサダー」として起用していたアイリスオーヤマは、事件後も離れることなく契約を続けました。
その後、吉沢さん主演の映画「国宝」は2025年最大のヒットとなるだけでなく、歴代興行収入でもトップになるほどの大成功を得ました。
映画「国宝」のポスター(写真:アフロ)
この大成功によって、ほとんどの人は吉沢さんのやらかしなど忘れてしまったと思います。圧倒的成果や実力は、強力な問題解決能力があります。
こうしてみると、真摯な謝罪はもちろんですが、休業など身を切る責任を取り、さらにはそれでも見捨てられない評価や実力があると、やらかしても「次」につなげていけるといえるのではないでしょうか。
謝罪は単なるテクニックではありません。危機管理であり、目的は事態収束です。戦略観のないやっつけ謝罪は、収束どころか新たな批判を呼ぶといえるでしょう。






